アナニノ文化(読み)あなにのぶんか(英語表記)Ананьино/Anan'ino

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナニノ文化」の意味・わかりやすい解説

アナニノ文化
あなにのぶんか
Ананьино/Anan'ino

ヨーロッパ・ロシアの東部、ボルガ川やカマ川流域にみられる紀元前8~前3世紀の青銅器および鉄器時代初期の文化。土塁や環濠(かんごう)をもつ集落跡や、低い墳丘の火葬または土葬墳墓で知られる。1858年に調査を始め、発掘地アナニノ村にちなんで命名された。

 農耕牧畜をおもな生業とし、狩猟漁労冶金(やきん)も営んだ。骨角や皮革の製品、窯陶器類は高い技術水準を示し、また銅や青銅の飾り板、鉄製の武器や利器には、グリフォンなどの動物意匠がみられる。これは、シベリアや南ロシア・カフカスのスキタイやサルマタイとの交流を証明するものであり、「フィン・スキタイ文化」とよばれるゆえんである。集落地の地形学的特徴、半地下式竪穴(たてあな)式住居や出土物の編年学的考察から、この文化は始原共同体社会の崩壊期に比定されるが、文化の起源やこの文化を担った人々の部族的帰属の問題はいまだ不詳である。

[清水睦夫]

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