改訂新版 世界大百科事典 「アニゴザンサス」の意味・わかりやすい解説
アニゴザンサス
kangaroo poo
Anigozanthus
オーストラリア南西部に数種が分化しているヒガンバナ科に近縁なハエモドラム科の中型宿根草。根は赤色で太くなる。葉は剣状。花茎は1~1.5mの高さに達し,上部は分枝して多数の花をつける。花は大きく3~5cm,ゆるやかに曲がった長い花筒部を有し外面は短い綿毛状の毛におおわれ,種によって花色は異なる。すなわち,コッキネウスA.coccineus Paxt.では深紅色,フラビドゥスA.flavidus Red.では黄緑色,マングレシイA.manglesii Donでは緑色である。特異な形をした花をカンガルー・ポーの名で観賞や切花用に栽培する。イギリスには19世紀初めに移入され,日本にも導入されたが,重要な園芸植物にはなっていない。子房下位で長い花筒部を有する花の特徴からヒガンバナ科に入れられることがあるが,球根をつくらず,花序が総状なので独立したハエモドラム科に入れられるようになった。オーストラリア南西部の地中海気候域で分化した特異な乾燥適応型の宿根草の一つである。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報