冬には地上部の一部は枯れるが、地下部は休眠状態で越冬し、翌春ふたたび根茎から芽を出し、生育し開花(結実)することを繰り返す草本植物をいう。しかし、一部には地上部も枯死せず根出葉(ロゼット状)の姿で越冬するものもあり、これらを総合して多年草ともよんでいる。宿根草の生育期は主として春から秋にかけてであるが、夏の暑さに弱い(非耐暑性)山草類や、反対に低温に弱い(非耐寒性)熱帯産のものがある。
花卉(かき)園芸では露地栽培を基準に、一、二年草、宿根草(多年草)、球根類というように区別しているが、これらは形態や生育特性、季節順応性などから区分したもので、植物分類学的な区別とは関係はない。
宿根草の大きな特色としては、一、二年草のように毎年種子を播(ま)いて育てるのとは異なり、一度植え込んでおくことで数年間手数のかからないものが多い。また繁殖も容易で、種子以外に株分け、挿芽(茎、葉、根の部分)などの栄養繁殖ができる。
宿根草には東洋原産のものが多く、日本産の草花類の多くは宿根草であるのに対し、一、二年草類は南アメリカ産、球根類の多くは地中海沿岸産というように地理的分布がみられる。日本でも北と南では気候的差があり、耐寒性と耐暑性の宿根草に区分できる。また冬季フレームなどですこしの防寒をすれば越冬できるものや、夏季遮光ネットで保護すれば暑熱を防げる宿根草もあるので、判然とは区別しにくいものもある。
[堀 保男]
草本植物のうちで,長年にわたり生存する性質のあるものを一般には多年草と呼んでいるが,花卉園芸界ではそれを宿根草といいならわしている。宿根草はキク,キキョウなどのように,総じて冬には地上部が枯れても地下部は生き残っていて,春には根株が発育してくる。熱帯原産の植物は耐寒力が弱く,クンシランやベゴニアなどのように低温では枯死するものが多い。また,ニチニチソウやサルビアのように,温帯地方では一年草として取り扱われるが,熱帯地方や温室では枯死せず宿根草となるものもある。地下部に養分を蓄えて生存に不適当な期間は休眠するものを球根植物(英名bulb)といい,これも広い意味では宿根草に含まれるが,別に扱われることが多い。宿根草には純然たる草本植物が多いが,中にはゼラニウムやマーガレットなどのように,組織が多少木質化して半低木状となるものもある。
宿根草は種子,株分け,挿芽(挿木),葉挿し,接木などの方法で繁殖されるが,三倍体植物や不稔性の優良な個体は,通常種子による繁殖は行われない。品種改良や育種のためには,交配による実生繁殖や,突然変異が取り上げられる。
執筆者:浅山 英一
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