日本大百科全書(ニッポニカ) 「アムッド洞穴人」の意味・わかりやすい解説
アムッド洞穴人
あむっどどうけつじん
Amud cave man
イスラエルの化石人類。1961年と1964年に東京大学西アジア洪積世人類遺跡調査団(団長鈴木尚(ひさし))はティベリアス湖北西におけるワディ・アムッドの洞穴より、計5体分の人類化石を発見したが、このうち第1号はほぼ完全個体であった。この人骨は成人男子であり、ルバロワゾ・ムステリアン型の石器を伴っていた。前頭骨が後退し、後頭隆起が発達している点で典型的ネアンデルタール人に似るが、頭高が高く、乳様突起が発達し、頤(おとがい)らしきものが存する。脳容積は1740ミリリットルで、すこぶる大きい。ヨーロッパのネアンデルタール人に比べて、進歩的様相を示す中近東のそれの特徴をよく保つ。最近の検査から、5~6万年前のものとみられている。
[香原志勢]