アルカス(読み)あるかす(英語表記)Arkas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルカス」の意味・わかりやすい解説

アルカス
あるかす
Arkas

ギリシア神話に登場する人物。最高神ゼウス(または牧神パン)とニンフカリストの子。母カリストが熊(くま)に変身したのち、ヘルメスの母マイアに育てられた。アルカス母方の祖父リカオンは、ゼウスの全知を試すため、幼いアルカスを殺して料理し、ゼウスの食卓に供した。しかしたくらみを見抜いたゼウスは、リカオンの館(やかた)を雷で撃ち、リカオンを狼(おおかみ)の姿に変えてアルカスを生き返らせた。ある日、成人したアルカスは森で熊の姿の母親に会い彼女を追ってゼウスの神域に足を踏み入れた。そこに入った者はみな死刑となったが、親子を哀れんだゼウスは、彼らをおおぐま座うしかい座アルクトゥルス)に変身させた。その後、アルカスはリカオンの子の後を継いでペラスゴイ人の王となり、その民は彼の名をとってアルカディア人とよばれた。

[小川正広]

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