禁制(読み)きんぜい

日本大百科全書(ニッポニカ)「禁制」の解説

禁制
きんぜい

鎌倉期以降、幕府や大名・国人(こくじん)などが、寺社・諸人に対しその保護と統制を目的として、(おきて)や禁止事項などを通知するために出した文書。禁札制札、制符ともいう。禁制には、権力者が広く一般に通知する目的で市町(いちまち)・村落に掲示する場合と、寺社・市町・村落の要請によって出される場合とがあり、その性質上、木札として出されたため各地に伝存する。形式については鎌倉期は一定しなかったが、室町期以降になると禁制の前半部分に禁止事項の箇条書、後半部分に違反者への処罰文言を記載するのが一般的となった。戦国期には寺社・市町・村落などが、兵火災害から自己を守るために大名・国人に保護を求めたため禁制が増加した。記載内容は多岐にわたるが、寺社には軍勢の乱妨(らんぼう)・陣取・放火・竹木伐採の禁止、僧衆・神職への生活規制、市町には喧嘩(けんか)口論、乱妨狼藉(ろうぜき)・押売押買・国質所質(くにじちところじち)などの禁止が多く、村落には軍勢の乱妨や百姓への不当行為などの禁止を示すものが多い。

[久保田昌希]

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百科事典マイペディア「禁制」の解説

禁制【きんぜい】

権力者が禁止事項を公示した文書。制札(せいさつ)・定書(さだめがき)・掟書(おきてがき),近世では高札(こうさつ)とも呼ぶ。文書様式は多種だが,中世後期からは下知(げち)状形式が多く,書き出しに〈禁制〉,その下に禁制の及ぶ範囲(所付(ところづけ)),次に禁令内容を箇条書きし,最後に違反者への処罰文言で結び,発給者(奉書の場合は奉者)が署判した。軍勢の乱暴狼藉などから保護するために発給した〈かばいの制札〉は,交付される側が請うて,見返りに礼銭を支払う場合が多かった。一方為政者が法令として発布した土一揆禁令などは近世のキリシタン禁制の高札につながる。
→関連項目下知状法度・村掟

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精選版 日本国語大辞典「禁制」の解説

きん‐せい【禁制】

〘名〙 (古くは「きんぜい」)
① ある行為を禁ずること。また、その法規。法度(はっと)
※続日本紀‐霊亀二年(716)五月丙申「冝厳加禁制上二更使一レ然」
※太平記(14C後)三四「去程に始のほどこそ禁制をも用ひけれ」
※浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)三「けふの供養には、女の参詣きんぜいとこそ候つれ」
② 歌や俳諧などで、用いてはならないことばや表現。
※近来風体(1387)「近代おほく禁制の詞ありといへども」

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デジタル大辞泉「禁制」の解説

きん‐せい【禁制】

[名](スル)《古くは「きんぜい」》ある行為を禁じること。また、その法規。「男子禁制

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世界大百科事典 第2版「禁制」の解説

きんぜい【禁制】

古文書形式の一つ。制は掟のことで,権力者が禁止事項を公示した文書をいう。文書様式としては下文(くだしぶみ)・下知状の形が多く,中世後期からはとくに後者が多く,書出しに〈禁制〉と書き,その下に規制対象範囲となる地名・寺社名を記し,本文を個条書きにした。内容は軍勢の乱暴狼藉,銭貨徴発等を禁止し,違犯者に対する処罰を明記したもので,中世では神仏崇敬人心収攬を目的とし,近世ではキリシタン禁圧を主とした。

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世界大百科事典内の禁制の言及

【下知状】より

…室町時代では御教書と御内書が幕府文書としては多く発せられ,下知状の残るものは少ない。なお室町時代の下知状様式の文書の一つに禁制(きんぜい)と過所(かしよ)がある。ともに幕府の奉行あるいは頭人などより出す文書で,前者は神社仏寺などに下し,境内への軍勢の乱入狼藉の禁止,山林竹木を刈り取ることの禁止などを定めたもの,後者は関所や津を通過するときの許可証として用いられた。…

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