イカタケ(読み)いかたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカタケ」の意味・わかりやすい解説

イカタケ
いかたけ / 烏賊茸
[学] Aseroe arachnoidea Fisch.

担子菌類、スッポンタケ目アカカゴタケ科のキノコ。脚(あし)を広げて逆立ちするイカを思わせる奇妙な形で目を引く。脚に似た部分を腕といい、数は7~15本で、長さ1~6センチメートルほど、高さ5~10センチメートルで、それが太さ2~3センチメートルの胴の上端から四方に広がる。全体は白いが、腕の内面は黒褐色で強い悪臭を放ち、粘液を帯びる。この粘液は胞子の集まりである。全体はもろい海綿質で、胴は中空。胴の根元は膜質のふくろ(つぼ)で包まれる。幼菌はこのふくろの中に圧縮されて包まれる。ふくろ全体はカメの卵に似た球塊であり、径3~4センチメートル。もみ殻を捨てたあとなどに群生することがある。東南アジアから日本にかけて分布する。全体が紅色状になるものがあり、アカイカタケA. rubra La Bill.とよばれる。

[今関六也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イカタケ」の意味・わかりやすい解説

イカタケ(烏賊茸)
イカタケ
Aseroe arachnoidea

担子菌類腹菌目アカカゴタケ科。腐植質の多い土壌の表面近くに,初め径 1.5~4cmの球形の菌蕾 (きんらい) を生じる。成熟するとその上部が裂けて地上に柱状の子実体が伸びる。頭部は7~15本に裂け,先が伸びてイカの足のような形になる。この足状枝を広げた形はちょうどイソギンチャクのようで,中央には黒褐色で異臭のある粘液物質を分泌する。その液中には無数の担子胞子が入っている。日本の本州各地をはじめ台湾,中国,東南アジアにかけて発見されているが稀産である。この種によく似たものとしてアカイカタケ A. rubraが知られている。これは頭部の分枝した部分が美しい紅色を呈する。同じく稀産であるが本州,四国,九州をはじめジャワスマトラオーストラリア,南アメリカにまで発見の記録がみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のイカタケの言及

【カゴタケ(籠茸)】より

…カゴタケに似て腕は太く色が赤いものをアカカゴタケClathrus ruber Pers.という。腕が2本で頂端で連なりカニのはさみに似ているカニノツメLinderia bicolumnata (Lloyd) Cunn.,下半部は柱状,上半部が3本に分かれその先端がつながるサンコタケPseudocolus schellenbergiae (Sumst.) Johns.,やや太い茎の先から多数の枝を出してそれを水平にひろげる風変りなイカタケAseroe arachnoidea Fisch.,アカイカタケA.rubra Bull.ex Fr.がある。いずれも発生はまれであるが,奇抜な形と悪臭で注目をひく。…

※「イカタケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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