日本大百科全書(ニッポニカ) 「イギリス連邦特恵制度」の意味・わかりやすい解説
イギリス連邦特恵制度
いぎりすれんぽうとっけいせいど
British Commonwealth Preferential Trade System
イギリスが連邦諸国から原材料や食料などを輸入するときには一般の関税より低い関税または無税とし(特恵供与)、反対に連邦諸国がイギリスから工業品を輸入するときには低関税として(逆特恵)、イギリスを中心としたブロック経済を結成しようとした制度。1929年末に発生した世界的大不況に対処するためアメリカをはじめとして多くの国が関税引上げ、輸入制限を実施し、その数は1931年中に約60か国に及んだ。このような事態に直面してイギリスは、1932年2月に保護主義的な体系をもつ一般関税法を制定して連邦外の国々に適用し、さらに同年7~8月にはカナダのオタワで会議を開き、カナダ、オーストラリアなどの連邦諸国との間に特恵関税を相互に与えることを主内容とした協定(オタワ協定)を締結した。この協定によりイギリス連邦特恵制度が成立した。これは、イギリスが自由貿易政策を放棄して保護貿易政策に転換したことを意味し、世界経済のブロック化を推し進める要因ともなった。第二次世界大戦後、自由・無差別を原則とするガット成立の際にも、イギリス連邦特恵制度は、特恵関税を新設しない、特恵税率を引き下げるという条件で、その存続を認められた。その後1973年1月にイギリスがEC(ヨーロッパ共同体)に加盟し、他の加盟国と同じく対外共通関税を実施することになったため、イギリス連邦特恵制度は廃止された。
[田中喜助]