特定の国に対して一般の関税率より低い税率を適用したり、無税にしたりする優遇措置。先進国が途上国の輸出拡大を支援する目的で設けるもののほか、経済連携協定(EPA)の締結国が互いに設定するものなどがある。EPAを結んだ相手国の関税率が下がればその分、価格競争力が増し、輸出拡大が期待できるなどのメリットがある。
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本来特定の国家グループ内において,相互の輸出品にとくに低い関税率を設定したり,相互に関税をゼロにすることにより,グループ内の貿易拡大を意図するものである。現在では,この特恵関税が先進国と発展途上国の間の問題に拡大され,前者の後者に対する経済協力の重要な一環とみなされるに至っている。具体的には,先進国が発展途上国の製品・半製品に対する関税を一方的に軽減ないし撤廃し,同種の産品の他の先進国からの輸入に対しては従来どおりの関税を賦課する措置をいう。
歴史的にみると,特恵関税は,重商主義の時代に本国と植民地間の貿易を緊密にする目的で,スペイン,オランダ,イギリスなどによって採用されてきた。その後自由貿易政策が各国で採用されるようになり,19世紀半ば以降は廃れた。しかし1930年代の大恐慌後のブロック経済の進展のなかで,いくつかの特恵関税制度が設定されたが,その代表が32年のイギリス連邦特恵関税制度(オタワ協定)である。
先進国による発展途上国への特恵供与問題が大きな論議を引き起こしたのは,1964年の第1回UNCTAD(アンクタツド)(国連貿易開発会議)においてであった。しかし,この問題については,グローバルな観点から世界的規模での自由貿易の必要性を主張する先進国の抵抗が強く,ようやく71年7月に至りECが,同年8月に日本が,特恵関税制度の実施に踏み切った。アメリカにおいては,その実施は76年まで引き延ばされた。
今日の発展途上国にとって,その経済発展を論じる場合,問題となるのは,一次産品の生産・輸出国が工業品の輸入代替的工業化に着手し,これを輸出産業化することによって工業化のサイクルを完成していく過程の問題であるということができる。いいかえれば経済発展はまず縦の系列として,産業構造の多様化や高度化によって実現されるのであるが,この場合,横の系列としての一つ一つの構造変動は,まず関税などによる国際的な不利な影響の遮断を通して始められ,やがて国際環境へのみずからの適合とその利用(輸出産業化)によって完結するのである。
今日の発展途上国にとっては,軽工業化と重化学工業化という2度にわたる構造変動が問題とされなければならない。そしてそれぞれについて,こうした輸入代替産業から輸出産業化への移行過程が決定的に重要なのである。
輸入代替産業が費用低下を通じて国際競争力を強化していく過程では,十分に大きな国内市場の存在が重要な前提の一つとなる。工業化に成功していない国々の工業化の現実については,その国内市場があまりに狭いため導入された工業が〈規模の経済効果〉を享受することができず,国際競争力をもたないままいつまでも政府の保護政策に依存しなければならないという事実が指摘されている。先進国による特恵関税の供与は,発展途上国の狭隘(きようあい)な国内市場に先進国市場の一部をつけ加えることによって,この〈市場制約〉の打開に貢献し,発展途上国の工業に規模の経済効果を実現させ製品・半製品輸出の拡大を図ろうとするものである。
しかしながら,先進国が特恵関税制度を充実させ発展途上国の産品に対する輸入障壁をいっそう軽減させたとしても,これらの市場開放政策が実効をあげるためには,その背後で先進国の産業調整が積極的に推進されなければならない。なぜならば,特恵関税供与などの市場開放政策によって,先進国の比較劣位部門の資本や労働は,これに代わる雇用機会を見いだしえない場合,重大な脅威にさらされるからである。しかしこの犠牲を回避する目的で政府の保護政策を要求するならば,市場開放政策は発展途上国の輸出拡大という所期の目的を達成しえないであろう。したがって,特恵供与による市場開放政策は産業調整政策により補強されなければならない。
→関税 →最恵国待遇 →ヤウンデ協定
執筆者:村上 敦
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特定の国からの輸入品に対して供与される関税上の特別優遇措置。これには、政治的、経済的に密接な関係にある諸国間のみで相互に一般の関税率より低い税率を適用しあう相互主義的なものと、一方的に低い税率を適用し、相手国からその代償(逆特恵)を要求しない非相互主義的なものとがある。前者にはイギリス連邦特恵関税、フランス連合特恵関税などがあり、これらは既存特恵といわれる。後者には、発展途上国の輸出増大、経済発展の促進を目的として設けられた一般特恵関税がある。これは、先進国が発展途上国からの輸入品に対して、相互主義を求めることなく、関税を撤廃したり、低い関税率を適用するものである。
一般特恵関税は国連貿易開発会議(UNCTAD(アンクタッド))で1964年に提案され、交渉は難航したが、70年に合意が得られ、71年7月からヨーロッパ共同体(EC)が、続いて8月から日本が実施し、81年1月には先進24か国(供与国)が実施している。特恵供与を受けた発展途上国(受益国)は110か国以上となっている。特恵供与の方式にはシーリング方式とエスケープ・クローズ方式とがある。前者は、発展途上国からの輸入に一定の限度枠を決めておき、その枠内まで特恵を認める方式である。後者は、枠を決めず、特恵輸入が増加し、国内産業に被害が生じたときは特恵供与を停止する方式である。日本では鉱工業品については前者を、農水産品については後者の方式を採用している。特恵の実施期間は当初10年間であったが、日本とECはともにさらに10年間延長している。また、一般特恵関税を実施してきた過程において、受益国のなかには新興工業国(韓国、シンガポール、ブラジルなど)のように国際競争力をつけてきた国もある。そのため、このような国に対しては特恵の適用の例外とすべきだという考え方が供与国に強まっている。わが国では、このような状況に対応して国別・品目別例外措置を導入している。
[田中喜助]
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