ブロック経済(読み)ブロックケイザイ(英語表記)bloc economy

デジタル大辞泉 「ブロック経済」の意味・読み・例文・類語

ブロック‐けいざい【ブロック経済】

複数の国々が経済的相互協力の体制を築いて域内における経済交流を促進し、域外諸国には閉鎖的な経済圏のこと。広域経済

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精選版 日本国語大辞典 「ブロック経済」の意味・読み・例文・類語

ブロック‐けいざい【ブロック経済】

  1. 〘 名詞 〙 政治上の同盟国や、本国と植民地などが結びついて一つの経済圏を作り、重要物質の自給自足商品市場の確保などを図ること。広域経済。
    1. [初出の実例]「ブロック経済の主張」(出典:ダイヴィング(1934)〈舟橋聖一〉三)

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改訂新版 世界大百科事典 「ブロック経済」の意味・わかりやすい解説

ブロック経済 (ブロックけいざい)
bloc economy

一般には,世界経済史上1930年代の大不況期から第2次大戦中にかけて現れた,主要国が自国を中心にいくつかの国によって排他的,閉鎖的なグループをつくり,その中での貿易によって経済を運営しようとした現象のことを指し,経済のブロック化ともいう。1929年に始まる世界的な大不況(いわゆる大恐慌)のなかで,世界各国は不況対策としてきそって関税・数量制限などの輸入制限を強化し,国際収支の赤字に悩む多くの国々は金本位制を停止して為替管理を強化した。これによって,自由,無差別を原則とし多角的決済に基礎をおく世界貿易の体制は崩壊し,世界貿易は二国間の通商協定,清算協定による差別的,双務的な体制のもとで行われるようになった。このような環境のなかで,世界の主要国は自国を中心とするいくつかの国々と経済領域,通貨圏をつくり,その中で互いに輸出を拡大し自国の産業に必要な資材の輸入を確保しようとした。経済ブロックには,イギリスを中心とするオタワ協定Ottawa Agreements(1932)に基づく特恵貿易地域,アメリカラテン・アメリカを結ぶもの,ドイツと南東ヨーロッパ諸国による広域経済圏Grossraumwirtschaft,フランスを中心とする金本位制を維持した国々による金ブロックなどがある。日本の大東亜共栄圏構想(大東亜共栄圏)は,満州,台湾,朝鮮から成るミニ・ブロックを本格的なものに拡大しようとしたものである。日本のこの構想およびドイツの広域経済圏を拡大しようという動きと,イギリス,フランス,アメリカなどとの利害の対立が,第2次大戦の主要な原因となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロック経済」の意味・わかりやすい解説

ブロック経済
ぶろっくけいざい
bloc economy 英語
économie en bloc フランス語
Wirtschaftsblock ドイツ語

いくつかの国を経済的に統合して、域内では特恵関税などにより貿易を盛んにし、域外に対しては差別的な高い関税を維持することなどによって一つの経済圏を形成すること。1930年代の世界的な大不況によって世界貿易は大幅な落ち込みをみせたが、それに対処するため、イギリス連邦が32年オタワ協定によって特恵関税を軸とするスターリング・ブロック(ポンド・ブロック)を形成したのがブロック経済の始まりである。それは、域内市場を外国から遮断して国内の不況を和らげることをねらったものであった。その後、これに対抗してドイツも、同様の構想のもとに東南ヨーロッパ諸国と双務的な清算協定を結んで、広域経済化を進めた。また、フランスを中心とする金ブロック、アメリカを中心とするドル・ブロック、日本を中心とする円ブロックなど、通貨ブロックが次々に形成された。これら排他的なブロック経済は、多角的な自由貿易を破壊するものであり、ブロック相互の間の政治的・経済的な摩擦を強め、第二次世界大戦を引き起こす一つの遠因となった。

[志田 明]

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百科事典マイペディア 「ブロック経済」の意味・わかりやすい解説

ブロック経済【ブロックけいざい】

本国と植民地,または同盟国が関税同盟や特恵関税により形成する閉鎖的経済体制。1932年イギリス連邦諸国がオタワ協定で世界恐慌対策として特恵制度によるブロックを形成したのに発端,米独日等各強国中心に結成。アウタルキー経済の拡大形態で,第2次大戦誘発の経済的要因である。近年では,EUNAFTAなどにおいてもブロック経済化の傾向が懸念されている。
→関連項目大恐慌第2次世界大戦ロンドン会議

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ブロック経済」の解説

ブロック経済
ブロックけいざい

1930年代に,主要資本主義国が植民地・半植民地・同盟国などを統括して形成した,排他的・閉鎖的経済体制。域外に対する高関税,2国間協定,通貨・商品割当てなどの手段がとられた。イギリスが32年のオタワ会議で採用した帝国内特恵関税制度(スターリング・ブロック)をその最初とする。ドイツも2国間清算協定,割当制度などによるバーター貿易を強化してマルク・ブロックを形成した。フランスはベルギー,スイスなどと金ブロックを,アメリカは南北アメリカでの貿易協定にもとづくゆるやかなドル・ブロックを,日本も円系通貨の使用を強制する円ブロックを形成していった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブロック経済」の意味・わかりやすい解説

ブロック経済
ブロックけいざい
block economy

複数の国々または本国と植民地,半植民地,従属国が形成する一つの経済圏。広域経済という語もほぼ同義に使われる。ブロック内の国々の経済的利益を守るため,対外的に貿易その他の面で障壁をつくって自由な経済交流を妨げる一方,ブロック内では特恵関税などにより相互の経済関係を強めるよう行動するのが特色。 1930年代には主要商品のブロック内における自給自足をはかる閉鎖的な経済圏がいくつか形成され,相互に政治的,軍事的,経済的に対立した。最近では EUの市場統合,北米自由貿易協定 NAFTAなどがブロック経済を目指すものの例としてあげられる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ブロック経済」の解説

ブロック経済
ブロックけいざい

独占資本主義諸国が恐慌克服のため,自国を中心に勢力範囲を結合して設定した排他的封鎖的経済
世界恐慌後,資本主義列強は植民地や従属国家を糾合して特恵関税や双務的清算協定を結び,景気変動に対応した。イギリスは1932年保護関税政策を採用し,同年カナダのオタワでイギリス連邦経済会議を開いてスターリング−ブロックを設定,ドイツは東南欧と組んで広域経済圏を,日本は大東亜共栄圏をつくってアメリカ・イギリスのブロックと競い合った。第二次世界大戦の原因の1つとなった。

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世界大百科事典(旧版)内のブロック経済の言及

【円ブロック】より

…1929年の大恐慌後主要資本主義国はそれぞれ植民地および勢力圏下の諸国をとりこんで,スターリング・ブロック,マルク・ブロック,金ブロックなどの排他的かつ閉鎖的な経済圏を形成したが,日本も満州国(中国東北),中国占領地を中心対象としてブロック経済圏を形成した。これを円ブロックという。…

【関税】より

…自由貿易を守っていたイギリスも,1932年の輸入関税法によって,ついに自由貿易政策を放棄し,同年にはオタワ協定によってイギリス連邦特恵関税制度を確立する。これを契機として,世界経済は排他的なブロック経済体制へと進展し,第2次大戦を招くことになる。同大戦が終りに近づくにつれて,ブロック経済体制と高関税・輸入制限政策が深く反省され,国際協調のもとに世界経済を立て直そうとする体制づくりが模索されはじめる。…

※「ブロック経済」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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