一般には,世界経済史上1930年代の大不況期から第2次大戦中にかけて現れた,主要国が自国を中心にいくつかの国によって排他的,閉鎖的なグループをつくり,その中での貿易によって経済を運営しようとした現象のことを指し,経済のブロック化ともいう。1929年に始まる世界的な大不況(いわゆる大恐慌)のなかで,世界各国は不況対策としてきそって関税・数量制限などの輸入制限を強化し,国際収支の赤字に悩む多くの国々は金本位制を停止して為替管理を強化した。これによって,自由,無差別を原則とし多角的決済に基礎をおく世界貿易の体制は崩壊し,世界貿易は二国間の通商協定,清算協定による差別的,双務的な体制のもとで行われるようになった。このような環境のなかで,世界の主要国は自国を中心とするいくつかの国々と経済領域,通貨圏をつくり,その中で互いに輸出を拡大し自国の産業に必要な資材の輸入を確保しようとした。経済ブロックには,イギリスを中心とするオタワ協定Ottawa Agreements(1932)に基づく特恵貿易地域,アメリカとラテン・アメリカを結ぶもの,ドイツと南東ヨーロッパ諸国による広域経済圏Grossraumwirtschaft,フランスを中心とする金本位制を維持した国々による金ブロックなどがある。日本の大東亜共栄圏構想(大東亜共栄圏)は,満州,台湾,朝鮮から成るミニ・ブロックを本格的なものに拡大しようとしたものである。日本のこの構想およびドイツの広域経済圏を拡大しようという動きと,イギリス,フランス,アメリカなどとの利害の対立が,第2次大戦の主要な原因となった。
執筆者:川鍋 襄
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いくつかの国を経済的に統合して、域内では特恵関税などにより貿易を盛んにし、域外に対しては差別的な高い関税を維持することなどによって一つの経済圏を形成すること。1930年代の世界的な大不況によって世界貿易は大幅な落ち込みをみせたが、それに対処するため、イギリス連邦が32年オタワ協定によって特恵関税を軸とするスターリング・ブロック(ポンド・ブロック)を形成したのがブロック経済の始まりである。それは、域内市場を外国から遮断して国内の不況を和らげることをねらったものであった。その後、これに対抗してドイツも、同様の構想のもとに東南ヨーロッパ諸国と双務的な清算協定を結んで、広域経済化を進めた。また、フランスを中心とする金ブロック、アメリカを中心とするドル・ブロック、日本を中心とする円ブロックなど、通貨ブロックが次々に形成された。これら排他的なブロック経済は、多角的な自由貿易を破壊するものであり、ブロック相互の間の政治的・経済的な摩擦を強め、第二次世界大戦を引き起こす一つの遠因となった。
[志田 明]
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1930年代に,主要資本主義国が植民地・半植民地・同盟国などを統括して形成した,排他的・閉鎖的経済体制。域外に対する高関税,2国間協定,通貨・商品割当てなどの手段がとられた。イギリスが32年のオタワ会議で採用した帝国内特恵関税制度(スターリング・ブロック)をその最初とする。ドイツも2国間清算協定,割当制度などによるバーター貿易を強化してマルク・ブロックを形成した。フランスはベルギー,スイスなどと金ブロックを,アメリカは南北アメリカでの貿易協定にもとづくゆるやかなドル・ブロックを,日本も円系通貨の使用を強制する円ブロックを形成していった。
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…1929年の大恐慌後主要資本主義国はそれぞれ植民地および勢力圏下の諸国をとりこんで,スターリング・ブロック,マルク・ブロック,金ブロックなどの排他的かつ閉鎖的な経済圏を形成したが,日本も満州国(中国東北),中国占領地を中心対象としてブロック経済圏を形成した。これを円ブロックという。…
…自由貿易を守っていたイギリスも,1932年の輸入関税法によって,ついに自由貿易政策を放棄し,同年にはオタワ協定によってイギリス連邦特恵関税制度を確立する。これを契機として,世界経済は排他的なブロック経済体制へと進展し,第2次大戦を招くことになる。同大戦が終りに近づくにつれて,ブロック経済体制と高関税・輸入制限政策が深く反省され,国際協調のもとに世界経済を立て直そうとする体制づくりが模索されはじめる。…
※「ブロック経済」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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