日本大百科全書(ニッポニカ) 「イトタマガシラ」の意味・わかりやすい解説
イトタマガシラ
いとたまがしら / 糸玉頭
Japanese whiptail
[学] Pentapodus nagasakiensis
硬骨魚綱スズキ目イトヨリダイ科に属する海水魚。千葉県以南の太平洋岸、小笠原(おがさわら)諸島、屋久島(やくしま)、南西諸島、台湾、済州島(さいしゅうとう)(韓国)、フィリピン諸島、インドネシア、オーストラリア北西岸などの海域に分布する。体は細長く、体長は体高のおよそ4~4.5倍。吻(ふん)は短く、眼径以下か同長。上顎(じょうがく)の先端に2~3対の小さい犬歯がある。下顎前部に1対の強い犬歯がある。目の下縁と眼下骨の間に前向棘(ぜんこうきょく)がない。眼下骨の縁辺に鋸歯(きょし)がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)は鱗(うろこ)をかぶらず、その下縁に鋸歯がない。頭頂部の鱗域(りんいき)は後鼻孔(こうびこう)に達しない。臀(しり)びれ第2棘は第3棘より短くて弱い。頬(ほお)の鱗は4~6列。側線鱗は44~45枚。尾びれは二叉(にさ)し、両葉の先端はとがらない。最大全長は約20センチメートル。体は背側面が黄色みを帯びた褐色で、腹面は白い。目の後縁から尾柄(びへい)の上部に達する黄色縦帯と、その直下を吻端から目の下半部を通って、尾柄中央部に達する白色縦帯がある。水深40~100メートルの岩礁域やサンゴ礁域の底近くにすみ、おもにエビ類などの小形甲殻類を食べる。幼魚は夏には藻場(もば)の沖の水深5メートル付近の砂礫(されき)底にみられるが、秋以降には水深10メートル付近の藻場の砂礫底にいる。本種のタイプ地(原記載地)は長崎県であることで種小名のnagasakiensisが、また体に白い糸状の縦帯があることでこの和名がつけられた。
[尼岡邦夫 2018年1月19日]