日本大百科全書(ニッポニカ) 「イネキモグリバエ」の意味・わかりやすい解説
イネキモグリバエ
いねきもぐりばえ / 稲黄潜蠅
rice stem maggot
[学] Chlorops oryzae
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群キモグリバエ科に属する昆虫。日本各地に分布し、幼虫はイネに寄生して被害を与える害虫として著名で、農業上はイネカラバエとよばれる。成虫の体長と翅長はともに2.5ミリメートルで、体色は黄色。触角と大形の単眼三角部はともに黒色。胸部背面には黒色の「小」字形の太い3縦条と、その外側に細い縦条があり、灰色粉を装う。幼虫はイネの成長点付近に生息し、伸長してくる葉や穂を食害する。被害を受けた葉は葉先が黄白色に変色するか、または傷葉(きずば)とよばれる細長い食痕(しょくこん)が縦条となって現れ、被害株は白色のささら状の傷穂となる。卵は細長く、長径0.7ミリメートルの白色で、イネの葉に点々と産み付けられる。幼虫は無頭のウジで乳白色を帯び、成長すると体長9ミリメートルになる。蛹(さなぎ)は体長7ミリメートルの淡褐色で、葉鞘(ようしょう)の入口付近でみつけられる。北海道と東北地方では1年に2世代、そのほかの地方では3世代発生し、幼虫態でスズメノテッポウ、ヌカボなどイネ科の植物の葉鞘内で越冬する。暖冬で積雪量が少ない年に発生率が高く、窒素肥料を多用すると被害が大きい。また、イネの品種の耐虫性によって被害に著しい差があることが知られている。
[伊藤修四郎]