ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イブン・ガビロル」の意味・わかりやすい解説
イブン・ガビロル
Ibn Gabirol, Solomon ben Judah
[没]1070頃.バレンシア
ユダヤ人の詩人,哲学者。ラテン名 Avicebronまたは Avencebrol。中世ヘブライ語の詩のうちで最もすぐれた作品を残した。部分的に残存している文法についての詩"Anaq",宗教的および世俗的なほぼ 400の抒情詩,Shebhu`otの祭礼のための典礼詩"Azharot"などがある。また神の本性,宇宙,人間の運命についての対話詩『王の冠』 Keter Malkhutは償いの日のためのユダヤ教の儀式文に採用されている。おもな哲学書はアラビア語で書かれ,ラテン語訳『生命の源泉』 Fons Vitaeがある。その形而上学的体系は新プラトン主義的であり,宇宙を実体の段階的なヒエラルキーと見,宇宙の質料は神の本質から生じ,宇宙の形式は神の意志と言葉に由来する。かくて知 (プロチノスのヌース) ,魂,自然という3つの精神的な,あるいは単純な基体が続き,さらに物体的あるいは混成的な基体の低位の世界が続く。またすべての存在は,精神的であれ肉体的であれ,質料と形式とから合成されると考えた。
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