改訂新版 世界大百科事典 「イマームザーデ」の意味・わかりやすい解説
イマームザーデ
imāmzāde
語義的には〈イマームの末裔〉の意味であるが,通常,イマームの子孫もしくはそう信じられた人物を埋葬した,イラン全域に見られる聖祠のこと。シーア派イスラムの,とくに女性にかかわる信仰生活は,イマームザーデあるいはそれと類似の機能をもつピールpīr(聖者祠),あるいはカダムガーqadamgāh(足跡祠),ジヤーラトガー(巡礼祠)などを中心に営まれているといっても過言でない。テヘラン南方郊外のシャー・アブドル・アジーム,シーラーズのシャー・チェラーグのように,広く全土から巡礼者を集める立派な建造物を伴う著名なものから,村外れの墓地に立つ小さなもの,あるいは山腹に単に石を積んだだけのもの(普通ピールと呼称)まで,その形態はさまざまである。今なお,古来の樹木・岩石崇拝,ゾロアスター教にさかのぼる拝火・拝水信仰の痕跡を色濃く残しているものも多い。また,特定の起源物語(夢のお告げなど)をもつものもみられる。ここでは,お参り,願掛け,特定日のお籠りなどが行われる。
→墓 →マザール
執筆者:上岡 弘二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報