日本大百科全書(ニッポニカ) 「インド暦」の意味・わかりやすい解説
インド暦
いんどれき
インドで行われる暦。現在使用されているものはインド各地に30種にも達するといわれるが、いずれも太陰太陽暦である。黄道を12等分して12宮を設け、太陽が一つの宮に入り、隣の宮に入るまでを太陽月の長さとするが、太陽の運行の速さは一様でなく、太陽月の長さは平均30.44日を前後する。日は日の出から、年は春分から、太陽月は太陽が各宮に入るときから始まる。一方、月の満ち欠けによって日を数えると、これは太陰月(朔望(さくぼう)月)である。インドでは1太陰月を2部分に分け、朔から望までを白月、望から朔までを黒月と名づける。暦月には白月から始まるものと黒月から始まるものの2種類がある。1太陰月の平均日数は29.53日であるが、この日数の間に、太陽月の始まりである入宮日が1回もないことが生じる。この太陰月を閏(うるう)月とする。また1太陰月に2回の入宮日があることがあり、この場合はその次にくる太陰月を一つ飛ばしてしまう。このように月の満ち欠けで日を数え、太陽の運行を取り入れて季節を調節していくのがインドの暦法であるが、これにさまざまな条件が組み合わされたり、また年数の数え方、すなわち紀元の種類も20種ほどあるために、多種の暦が生まれる。1952年、インドでは一つの暦に統一するため改暦委員会が設けられ、その決定により、1957年3月22日を釈迦(しゃか)紀元1879年カイトラ月1日とする釈迦紀元に従うことになった。
[渡辺敏夫]