ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インノケンチウス10世」の意味・わかりやすい解説
インノケンチウス10世
インノケンチウスじっせい
Innocentius X
[没]1655.1.7. ローマ
ローマ出身の第236代教皇(在位 1644~55)。本名 Giambattista Pamfili。教皇庁の裁判官,駐ナポリ王国教皇代理,駐スペイン教皇大使を歴任。1626年に教皇ウルバヌス8世(在位 1623~44)から枢機卿(→カーディナル)に任命され,1644年9月に教皇位を引き継いだ。前教皇と対立していた枢機卿らの支持を得てその政策を無効とし,三十年戦争を決着させたウェストファリアの講和も非難した。近親者との関係には問題があり,縁故主義のそしりは免れない。対外的にはスペインのハプスブルク家を支持し,スペインと戦っていたポルトガルの独立を認めなかった。神学においては,イエズス会とジャンセニズムの対立に介入し,1653年の勅書で,司教コルネリウス・ヤンセニウスによる恩恵の本質への解釈をとがめた。ジャンセニズムとの 1世紀にわたる論争は,特にフランスの教会にとって打撃となった。在位中,教皇の威光は著しく衰退した。
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