イーサン・フローム(読み)いーさんふろーむ(英語表記)Ethan Frome

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーサン・フローム」の意味・わかりやすい解説

イーサン・フローム
いーさんふろーむ
Ethan Frome

アメリカの女流作家E・ウォートンの中編小説。1911年刊。ニューイングランドを舞台に、農夫イーサン、病身の妻ジーナ、手伝いにきた妻の従妹(いとこ)マティの愛憎悲劇を、第三者視点からフラッシュ・バックの技法で描く。イーサンとマティが愛し合っていることに気づいた妻は、従妹を追い出そうとする。イーサンはマティと駆け落ちしたいと思うが、金銭上の理由と妻への責任感から果たさずにいるうち、2人は心中に追い込まれ、さらには心中に失敗し、イーサンは足が不自由に、マティは半身不随になり果てる。そして2人を引き取り、世話をするのがジーナの巡り合わせとなる。

[八木敏雄]

『高村勝治訳『現代アメリカ文学選集3 イーサン・フローム』(1967・荒地出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イーサン・フローム」の意味・わかりやすい解説

イーサン・フローム
Ethan Frome

アメリカの女流作家 E.ウォートンの小説。 1911年刊。ニューイングランドのきびしい自然を背景に,寒村で展開される3人の男女の悲劇的な愛欲を第三者の目を通して語ったウォートンの代表作。憂鬱症的な病身の妻ジーナと暮す農夫イーサンは,ジーナの従妹マティのあふれるような若さに魅せられ,不倫の恋に陥る。やがて不幸な関係を清算しようとそりを木にぶつけて死をはかった2人は,大けがをしたが悔恨のうちに生残り,一方ジーナは献身的な妻に変貌するという皮肉な結末の物語。

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世界大百科事典(旧版)内のイーサン・フロームの言及

【ウォートン】より

…離国作家の一人であり,ヨーロッパを背景にした作品も多いが,代表作では,19世紀後半のニューヨークやニューイングランドを扱い,個人の倫理感覚や心理を組み込んだ巧緻な風習小説をつくり出した。才気に満ちた美貌の女性が結婚への野心と真実の心の間をさ迷って死に至る《楽しみの家》(1905),ニューイングランドの農村に起こった厳しい愛憎の悲劇を描いた《イーサン・フローム》(1911),アメリカとフランスの風習の対比を扱った《一国の慣習》(1913),1870年代のニューヨークを風刺的に描いた《無邪気な時代》(1920),四部作《古きニューヨーク》(1924)など20冊余りの小説と,短編,詩,旅行記のほか,評論集《小説作法》(1925),回想記《過去を顧みて》(1934)がある。【海老根 静江】。…

※「イーサン・フローム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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