日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウシバエ」の意味・わかりやすい解説
ウシバエ
うしばえ / 牛蠅
warble fly
bot fly
[学] ypoderma bovis
昆虫綱双翅(そうし)目環縫亜目ウシバエ科に属する昆虫。ハエ類中では大形種で、体長13~15ミリメートル。体は黒色で、体表に黄色の長毛を密生する。胸部には光沢のある4本の黒色縦条がある。腹部背面は基部に黄白色毛、中央部に黒色毛、尾端には橙黄(とうこう)色毛をベルト状に装う。脚(あし)には剛毛はない。本種は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ北部、北アメリカの各大陸に広く分布するが、日本ではまれな種である。成虫は6~7月に多く出現し、ウシの体表の毛に産卵し、4~7日で孵化(ふか)した幼虫(ウジ)は皮下に潜入して寄生する。成熟した幼虫は、ウシの背面に移動してこぶをつくり、初夏に宿主から脱出して地中で蛹化(ようか)し、約4週間を経て新成虫が羽化する。ウシの皮膚に脱出孔(こう)が生じるため、皮革の商品価値が下がり、牧畜生産上問題となる。
[倉橋 弘]