ウニボス(その他表記)Unibos

改訂新版 世界大百科事典 「ウニボス」の意味・わかりやすい解説

ウニボス
Unibos

11世紀ころ,北フランスで僧侶出身の吟遊詩人によって語られ,人気を博した大うそつきの物語。《グリム童話》では61番〈小百姓〉がこれの類話であり,アンデルセンも〈大クラウス,小クラウス〉の名で再話している。ウニボスとは1頭の牛しかもっていない貧乏人の意。ウニボスとよばれる男が死んだ牛の皮が売れたとうそをつくと,村長代官,僧侶がまねして牛を殺すが皮は売れない。彼は復讐にきた3人を,死者を生き返らせる策,金貨を屁(ひ)る馬でだます。ウニボスはしまいに袋づめにされ,海に捨てられることになるが,すきをみて,通りがかった豚飼いを言いくるめて入れかわる。豚群をつれてもどり,海底に豚の大群がいるとうそをつくと,3人は海へ入って死ぬ。

 日本ではアンデルセンの話が1891年に尾崎紅葉によって《二人椋助(むくすけ)》の題で訳された。岩手県の〈馬喰八十八〉,和歌山県の〈大むく助と小むく助〉,青森県の〈大ぶくろと小ぶくろ〉はこれが口伝えされたものと考えられる。一方,袋づめ以降の話が日本各地で独立に伝えられ,〈俵薬師〉とよばれている。これは紅葉訳より以前に日本に渡来したものと思われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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