『グリム童話集』(第61番)の話。裕福な村で「小百姓」とよばれる男だけが貧しい。彼は木製の牛をだしにして本物の牛を手に入れるが、飼料がないので殺して皮を売りにいく。途中、水車小屋の妻が間男しているのをみつけ、占い皮と詐称して牛の皮を高く売りつける。村へ帰ると、牛皮が高く売れたという。だまされて牛を殺したが皮は売れなかった村長たちは、小百姓を樽(たる)に詰めて水に流すことにする。樽の中の小百姓は、ミサを読んでいる僧侶(そうりょ)があの間男と見破り、抱き込む。羊飼いが通りかかると、小百姓は、村長になれといわれて樽詰めにされたといい、羊飼いと入れ替わる。羊の群れを連れて村へ帰り、川底から連れてきたといったので村長たちも羊をとりに川へ飛び込み、小百姓1人残って金持ちになる。この話は中世ラテン語の詩物語に由来し、アンデルセンも『大クラウス、小クラウス』として再話しており、日本では『馬喰八十八(ばくろうやそはち)』という類話がある。
[小澤俊夫]
『高橋健二訳『グリム童話全集2』(1976・小学館)』
経営規模の小さい百姓のこと。(1)中世の荘園村落で名主の小作やわずかな自作をする百姓。隷属性の強い下人・所従とは異なり,中世後期村落の寄合に参加しているように,身分的には独立した存在。(2)近世の小高持ちの百姓。平百姓,脇百姓,小前(こまえ)などともいう。小作のみの水呑百姓や名子(なご)・被官などの隷属層とは明確に区別された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…17世紀後半期には近世村落(小農村落)が成立し,身分や家格に拘束されることなく高持百姓全員が村落構成員としての資格を獲得するようになるが,近世村落の成立によって,百姓としての権利と義務(用水や入会地の利用権,年貢・諸役・村入用など諸負担の義務)を持つ高持百姓を小前と呼ぶようになる。しかし小前の用語にはかなり広い意味が含まれていて,(1)高持百姓のすべてを指す場合,(2)村役人以外の一般の高持百姓を指す場合,(3)無高の水呑百姓をも含めて,弱小な小百姓を指す場合,などがある。《地方(じかた)凡例録》に〈小前持高十分の一以下の荒地ハ,定免年季内は百姓内済〉とあるなどは(1)の例であり,同書の他の場所に〈小前連印村役人奥印の請書証文を出させべきこと〉とあるのは(2)の例である。…
…1598年(慶長3)の近江国蒲生郡今在家村の事例では,両帳の間で総面積,村高,屋敷数などがほぼ一致しているが,登録人数では名寄帳のそれが著しく少なく,検地帳の半数にすぎない。初期の検地帳には,村内の有力農民である長百姓(おさびやくしよう∥おとなびやくしよう)などとともに弱小で零細な小百姓(こびやくしよう),平百姓(ひらびやくしよう)などが多数登録され,その中には有力農民の血縁小家族や名子(なご),被官,家持下人なども含まれていた。領主による検地に際して,弱小農民は有力農民と並ぶ年貢負担者とされ,検地帳上では高請地(たかうけち)の名請人(なうけにん)として登録されていたが,村内における生産・生活の実態の中では弱小農民は有力農民の庇護下にあった。…
…隷属身分の農民はしだいに減少するが,地域によっては長く残り,彼らの身分解放闘争はのちのちまで現れる。また小百姓は村役人の特権や恣意の限定をめざして争ったり,村役人の不正ではないが上層農民が有利になる軒割(のきわり)賦課に反対し,負担を持高割(もちだかわり)にすることを求めたりした。これらはすべて小農自立闘争としての意義をもった。…
…11世紀ころ,北フランスで僧侶出身の吟遊詩人によって語られ,人気を博した大うそつきの物語。《グリム童話》では61番〈小百姓〉がこれの類話であり,アンデルセンも〈大クラウス,小クラウス〉の名で再話している。ウニボスとは1頭の牛しかもっていない貧乏人の意。…
※「小百姓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新