ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラジーミル1世」の意味・わかりやすい解説
ウラジーミル1世(聖公)
ウラジーミルいっせい[せいこう]
Vladimir I Svyatoslavich, Svyatoi
[没]1015. キエフ近郊
ロシアのキエフ大公 (在位 980~1015) 。スビャトスラフの庶子。最初ノブゴロドに封じられていたが,バリャーグ人の後援を得て,全ルーシの支配者長兄ヤロポルクを破ってキエフに進出。公位についたのち,諸方に遠征して領土を大いに拡大し,残存種族の公を滅ぼしてリューリク朝キエフ・ルーシの最盛期を築き上げた。ビザンチン帝国の軍隊暴動に際して鎮圧に力を貸し,皇帝バシリウス2世の妹アンナを妻に迎え,ギリシア正教を国教と定め,ビザンチン教会から招いた司祭のもとに,988年キエフの全住民をドネプル河畔に集めて洗礼を受けさせた。この結果ロシアはキリスト教世界,特にギリシア正教世界の一員となり,その後ロシアの政治・文化史発展の方向がここに定められた。公はキエフに多くの教会を建て,聖職者を保護し,正教教典を翻訳させ,また年代記の編纂を奨励した。公はキエフ大公の権威を高め,遊牧民 (ペチェネグ人) の侵入を撃退したので,長く民衆の記憶にも残った。ルーシの英雄叙事詩『ブイリーナ』は公をたたえ,この時代のキエフ国家建設の民族的体験についての追憶を伝えている。
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