碓氷峠には道筋に三回の変化があり、古代から中世初期の碓氷坂、中世から近世中山道時代の旧碓氷峠、そして明治一六年(一八八三)末に開通した国道碓氷峠(現国道一八号)がそれである。昭和三〇年(一九五五)現軽井沢町
松井田町と長野県
同書巻二〇には
と詠まれており、防人たちにとっては別離の場所でもあった。昌泰二年(八九九)九月一九日付太政官符(類聚三代格)には上野国碓氷坂に関所が設置されたことがみえ、天慶三年(九四〇)四月六日には碓氷関使が停止されている(貞信公記)。この関は東山道碓氷坂に設置されたものと考えられる(→碓氷関所跡)。碓氷坂は「五代集歌枕」「八雲御抄」にあげられる。また前掲「日本書紀」の記事をめぐっては、「古事記」が「あづまはや」の嘆きの場所を相模
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
群馬県安中市と長野県北佐久郡軽井沢町との境にある峠。標高958m。峠の東麓の坂本(安中市)は標高約500mで,峠までの直線距離約6kmの間は450mを登る難所だが,峠の西側は平たんな高原となっている。
古く《日本書紀》に,日本武尊が東国から信濃に入る時〈碓日坂(うすひのさか)〉にいたり,〈碓日嶺〉に登って弟橘媛をしのび,〈吾嬬(あづま)はや〉といったという伝説が載る。《万葉集》巻十四に〈日の暮に碓氷の山を越ゆる日はせなのが袖もさやにふらしつ〉があり,巻二十にも坂を越える歌がある。この碓氷坂は畿内と東国を結ぶ古代東山道の要衝であったが,碓氷峠の南の入山峠をさすといわれる。なお峠の呼称は,碓氷峠にある熊野皇太神社の正応5年(1292)銘銅鐘に〈臼井到下(うすいとうげ)〉とあるのが早い。1602年(慶長7)に坂本から北側の尾根伝いに峠へ出,軽井沢に抜ける道が正式に中山道に制定され,峠をはさんで坂本宿,軽井沢宿が設置された。峠頂上には峠の茶屋ができ,熊野皇太神社の鳥居前町である峠町(現地籍は安中市と軽井沢町に分かれる)が形成されて,交通がしげくなるとともに〈間(あい)の宿〉としてにぎわった。碓氷関は899年(昌泰2)横川(同市)に置かれたのが古いが,中山道の関所としては1590年(天正18)碓氷峠に設けられ,1623年(元和9)横川に移された。
1886年中山道は,これまでの道の南に新碓氷峠越えの道(現,国道18号線)が完成し,信越本線開通後は重要度を減じたが,第2次大戦後は交通車両の増加で完全舗装された。しかし急こう配,急カーブの難所であるため,1971年に碓氷バイパスが峠の南3kmの地点に開通し,峠越えの車は急減した。1893年開通の信越本線は,碓氷越えの横川~軽井沢間に長短26のトンネルがあり,急こう配でアプト式軌条が用いられていたが,1963年複線電化され,アプト式は廃止された。97年10月には長野新幹線が碓氷峠の南を迂回して通じ,第三セクターのしなの鉄道が軽井沢から篠ノ井へ通じて,碓氷峠越えの鉄道は廃止され,横川~軽井沢間はバス路線となった。なおこの峠は方言の境にあたり,推量の助動詞〈だろう〉を群馬県側では〈べ〉,長野県側では〈ず〉というため,〈鳴くべ鳴かずの峠〉ともいわれた。
執筆者:有末 武夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
群馬県安中市(あんなかし)松井田町(まついだまち)地区と長野県北佐久(きたさく)郡軽井沢町(かるいざわまち)との境界をなす峠。新旧の峠があり、旧碓氷峠は、中山道(なかせんどう)第一の天険として、東海道の箱根峠と並び称せられた。『日本書紀』に碓日坂(うすひのさか)、『万葉集』に「宇須比」坂と記載されて、当時から関東平野と中央高地をつなぐ重要な峠であった。東麓(とうろく)の坂本は標高502メートルなので、比高約450メートルを、8キロメートル登って峠となり、峠の西は平坦(へいたん)な高原となる。中山道には新旧があり、旧道は横川(よこかわ)、坂本から北方を回り、峠町(とうげまち)地区から旧軽井沢に通じた道路で、横川に安中藩が守った碓氷関、坂本に宿駅が置かれた。新道は1883年(明治16)その南方につくられた道路で、1893年新道の北に信越本線が開通し、横川―軽井沢間11.2キロメートルが66.7‰(パーミル)の急勾配(こうばい)のため、わが国では珍しいアプト式軌道によった。しかし、これは1963年(昭和38)に廃止となり、普通方式の軌道が敷設された。その後、1997年(平成9)の長野新幹線開業に伴い、信越本線の横川―軽井沢間は廃止、バス輸送に転換された。新道は国道18号となり、完全舗装の道路であるが、カーブが多く、自動車の交通量がきわめて多いので、1971年その南方に碓氷バイパス道路が開通した。峠は新緑、紅葉ともに美しく、旧道はハイキングによく、碓氷関所跡や峠町の熊野神社を訪れる者も多い。また、碓氷峠鉄道施設のうち、トンネルや橋、旧駅などが国の重要文化財に指定されている。
[村木定雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…箱根火山を越える峠は他に乙女峠(1005m),湯河原峠などいくつかあり,それぞれ東海道の裏街道(国道138号線)や間道が通過する。群馬県側から長野県の軽井沢へ越える中山道(国道18号線)の現在の碓氷峠(958m)は1885年に通じたが,古いものはその北にある峠集落の処(ところ)(1180m)と南の入山峠(1020m)とに通じていた。入山峠はその後一時廃れたが最近になって自動車専用の碓氷バイパスが通じて復活した。…
※「碓氷峠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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