ウリチ (ウリチ)
Ul'chi
ロシア連邦の極東地域,ハバロフスク地方に住む先住民で,自称はナニ。人口3200(1989)。居住地はアムール川の下流域にあたり,北ではニブヒ(旧称ギリヤーク)に接し,南ではナナイ(旧称ゴリド)と混住村をなしていた。また,かつては南サハリンにも往来し,所々でアイヌやニブヒなどと混在,同化の痕跡を残している。ツングース・満州語派に属するナナイ語に近縁のウリチ語を話し,アムール川流域のこの語派の言語を使用する他の諸族と,全体的には共通の文化をもっていた。伝統的には川の流域に定住し,夏から秋に産卵のため遡上するサケ・マスの漁と森林での狩猟・採集を生活の基盤としていた。旧ソ連邦時代はコルホーズに組織されて漁労・狩猟に従事するほか,人口の10%以上は都市に住んだ。
執筆者:荻原 真子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のウリチの言及
【ツングース諸語】より
…B群:(5)ウデヘ語Udehe,(6)オロチ語Orochi。C群:(7)ナナイ語Nanai(またはゴリド語Gol’d),(8)オルチャ語Olcha(またはウリチ語Ul’chi),(9)[ウイルタ語](オロッコ語)。D群:(10)[満州語],(11)女真語([女真文字])。…
【ソビエト連邦】より
…上記のハンティ,マンシ,ネネツもその一部であるが,大部分はツングース語系諸族と旧シベリア諸族(パレオアジアート,古アジア諸族とも呼ばれる)である。前者には西シベリアからオホーツク海沿岸に分布するエベンキ族,アムール川下流,サハリン,沿海州に分布するエベン族,ナナイ族,ウリチ族,ウイルタ族(旧称オロッコ族),オロチ族などの民族が属し,後者にはコリヤーク族,チュクチ族,イテリメン族(旧称カムチャダール族),ニブヒ族(旧称ギリヤーク族),ユカギール族,ケート族などの民族が属する。 インド・ヨーロッパ語族に属する言語をもつ民族には,前記のロシア人,ウクライナ人,白ロシア人(ベラルーシ人)のほかに,バルト海沿岸にリトアニア人とラトビア人,ウクライナの南に,ルーマニア人と言語・文化の面で近いモルダビア(モルドバ)人がいる。…
【ツングース語系諸族】より
…この2民族以外はロシアの極東地域(アムール川流域,沿海州,サハリン)に古くから居住してきた民族である。そのうち,[ナナイ族],[ウリチ族],[オロチ族],[ネギダール族]は,アムール川の中・下流域に定住し,サケ・マス漁を主とする漁労文化を発達させてきた。また,沿海州の[ウデヘ族]は移動生活を送りながら,森林獣の狩猟と河川での漁労を営んだ。…
※「ウリチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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