日本大百科全書(ニッポニカ) 「エステス」の意味・わかりやすい解説
エステス(Richard Estes)
えすてす
Richard Estes
(1932― )
アメリカの画家。1970年代初頭に盛んとなったスーパーリアリズム(別名ハイパーリアリズム、フォト・リアリズム)を代表する画家。イリノイ州エバンストンに生まれる。シカゴ美術研究所に学び、1968年に最初の個展をニューヨークで開いた。スーパーリアリズムという名称が示すように、いわゆる写実絵画とは異なり、プロジェクターで投影された写真を用いて、風景や事物を映像のもつ精密度で描くことを特徴とする。好んで都会の街路、広告看板、ポスター、マネキンなど現代的な光景を主題とする点ではポップ・アートと共通し、明晰(めいせき)で冷徹な機械の目への信頼はミニマル・アートの没個性的な作風と共通しているといえよう。その作品はガラス窓や自動車のボディーなどの表面への光やものの反映を巧みに取り入れ、クールで乾いた叙情性を漂わせる。盛期から20年近くが経過した1990年(平成2)に日本初の個展が東京・新宿で開催された。
[石崎浩一郎]
『森下泰輔著「リチャード・エステスと写真以降」(『美術評論』第1巻所収・2001・ギャラリーステーション)』▽『Louis K. MeiselRichard Estes ; the complete paintings, 1966-1985(1986, Abrams, New York)』▽『John ArthurRichard Estes ; Paintings & Prints(1993, Pomegranate Artbooks, San Francisco)』
エステス(Eleanor Estes)
えすてす
Eleanor Estes
(1906―1988)
アメリカの児童文学作家。コネティカット州ウェスト・ヘイブンに生まれる。プラット・インスティテュート・ライブラリー・スクール卒業。ニューヨーク市で児童図書館員を勤めながら書いた処女作『元気なモファットきょうだい』(1941)が好評を博し、それを機に作家の道に進む。続編『ジェーンはまんなかさん』(1942)、『すえっ子のルーファス』(1943)と続く三部作が代表作となる。スロボドキンが挿絵を描く『百まいのきもの』(1944)は、幼年物語の古典となる。『すてきな子いぬジンジャー』(1951)でニューベリー賞を受賞。後期の作品『コート・ハンガー・クリスマス・ツリー』(1973)は、リアリズム児童文学の傑作と評価される。アルバータス・マグナス大学より名誉博士号を贈られる。
[渡辺茂男]
『石井桃子訳『百まいのきもの』(1951・岩波書店)』▽『渡辺茂男訳『げんきなモファットきょうだい』(1988・岩波書店)』