翻訳|mannequin
衣料品の展示・販売の目的で使用する人形。フランス語風にマヌカンと呼ぶと,ファッションモデルや絵のモデルを指す。最古のマネキンとされているのは,前1350年代エジプト王の墓に埋蔵された等身大の木製人形で,衣装作成用人台といわれている。衣服着装用マネキンは,14世紀パリのミニチュアマネキンに始まり,15世紀には等身大のろう製人形が衣服の展示・販売のほか,見世物人形としても使われた。17~18世紀にはフランスでファッションドールの創作が盛んに行われ,海外にも輸出されている。本格的にマネキンが使用されるのは,1925年パリ万国博で衣装陳列人形が展示されてからである。日本では,木くずで作られた菊人形のような生人形(いきにんぎよう)が和装マネキンとして,1894年下谷の川越呉服店で用いられている。洋装マネキンは,島津良蔵によって1925年に企業化が始められた。このころのマネキンはろう製で,これは熱などにより変形しやすいうえ,高価であった。そのため,28年に日本独自のファイバー(和紙をのりで固めたもの)製が開発されると市場は一変し,59年FRP(強化プラスチック)製のマネキンが実用化されるまでの一時代を築く。ファイバー製のマネキンの髪は人毛を植え付けるか,髪型を造形して彩色している。60-65年を境に,着せるマネキンから売場や店舗全体を引き立たせるマネキンへと変化する。それに伴い,素材はFRP製のボディ,塩化ビニルの手先,化学繊維のブロンドのかつら,形態は現実に近い乳房や手先,自然な皮膚の色となる。1934年東京の三越では,フランスから輸入した約20体を使用し,1体1000円もしたという。同店で現在は約1000体を使用している。マネキン製作はまず粘土による原型作りから始まるが,そのサイズは衣服を着用させる肩からひざまでを標準寸法で作り,首や足は少し長めに作る。顔は実在人物をモデルにイメージ表現するが,頭はやや小さめに作るため9頭身に近くなっている。現在ほとんどがレンタル方式で利用されている。一つの型での生産数は平均300~400体で,借手の要求に従い,1~3ヵ月の単位で色や表情を変え,改造して,平均3~4年使用する。全身マネキン生産量は約15万体で,これは新作と補充改造の合計である(日本マネキンディスプレイ協会1982年調べ)。
執筆者:広瀬 明子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランス語ではマヌカンといい、(1)美術、医学用の人体模型、(2)服をかける人台、(3)ドレススタンド、(4)マネキン人形、(5)ファッション・モデル、などの意味がある。日本では、大正の初め、ファッション・モデルのグループとしてマネキンクラブの名が用いられたが、これは、当時モデルといえばヌードを意味するのを嫌ってのことという。昭和に入ってからは、新商品の宣伝販売にデパートに派遣される女子店員をマネキンガールといい、当時の流行語となった。今日では、デパート、スーパー、展示場などへの販売スタッフやデモンストレーターを派遣する組織をマネキン紹介所といい、厚生労働大臣の許可を受けて求人・求職を斡旋(あっせん)している。
[小川乃倫子]
マネキンは普通、衣装用のマネキン人形をさしており、動くマネキンのほうは、ファッション・モデル、あるいはマヌカンの語が使われる。現在のような職業人としてのモデルが登場したのは20世紀初めのことで、パリのクチュリエ、ポール・ポワレPaul Poiret(1879―1944)が専属のモデルを連れて各地でショーを開いたのが最初である。
[辻ますみ]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
「マヌカン」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…それ以前はスタイル画を展示したり,人形に衣服を着せて展示したりしていた。ワースは新作の服を妻に着せ,競馬場や公園,避暑地,劇場などを歩かせて披露し,ファッション・モデル(フランス語ではマヌカンmannequin)の基をつくった。 日本で初めてファッション・ショーの名で行われた催しは1927年9月の三越染織逸品会で,30年には上野松坂屋,34年には資生堂がビューティ・ファッション・ショーを開いた。…
※「マネキン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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