改訂新版 世界大百科事典 「エピタデウス」の意味・わかりやすい解説
エピタデウス
Epitadeus
前4世紀初めのスパルタのエフォロス(監督官)。生没年不詳。エフォロス在任中に息子を相続から排除する目的で,家産と世襲地を自由に贈与あるいは遺贈することを許す法を制定したという。この伝承の信憑性を疑うむきもあるが,動機はともかく法制定は前4世紀初めの歴史的事実とされる。スパルタは平等者の共同体を維持するために鎖国体制をしいていたが,ペロポネソス戦争を機にこれが崩れ,富が流入すると貧富の差が急激に拡大し,土地を失うものも現れた。エピタデウスの法はこの状態を追認し事態をいっそう悪化させた。このためレウクトラの戦の前夜,完全市民数は1000にも満たず,土地の2/5は女性の手にあったという。
執筆者:古山 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報