改訂新版 世界大百科事典 「エペソ人への手紙」の意味・わかりやすい解説
エペソ人への手紙 (エペソびとへのてがみ)
Letter to the Ephesians
最初期キリスト教の使徒パウロが,小アジア西岸の大都市エペソ(エフェソス)の教会にあてて書いたとされ,新約聖書の中に収められている手紙。パウロは彼の第2伝道旅行(49-52年,《使徒行伝》15:36~18:22)の最後にエペソに教会を設立した(52年ころ)。その後第3伝道旅行(53-56年,《使徒行伝》18:23以下)の際に,約2年間当地に滞在し,その間に《コリント人への手紙》《ガラテヤ人への手紙》《ピリピ人への手紙》の一部などを書いている。《エペソ人への手紙》がパウロの真正の手紙であるかどうかは論争されているが,これと多くの類似性をもつ《コロサイ人への手紙》と比較して,パウロの直筆ではないと言い切る学者が多い。事実1章23節ではパウロにおけるのとは異なって,キリスト論が教会に従属するものとされ,また2章5,8節では,パウロ的な信仰義認論の継承にもかかわらず,〈救い〉がすでに起こったことがらとしてとらえられており,パウロが踏みとどまった限界を跳び越えている。
執筆者:青野 太潮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報