日本大百科全書(ニッポニカ) 「オクチャーブリ」の意味・わかりやすい解説
オクチャーブリ
おくちゃーぶり
Октябрь/Oktyabr'
ロシアの月刊文芸誌。雑誌名は「十月」を意味し、「1917年の十月社会主義革命」のことをさす。1924年、モスクワ・プロレタリア作家協会(マップ)の機関誌として創刊される。その後、全ロシア・プロレタリア作家協会(ワップ)、ロシア連邦作家同盟などの機関誌として発行され続けた。おもにコーチェトフが編集長を務めた60~70年代には、雑誌『ノーブイ・ミール』などの自由主義的傾向に対立する保守的な立場の陣地となる。しかし、ペレストロイカ(建て直し)以降、それまでロシア国内で印刷されることのなかった、V・グロスマン『人生と運命』(1988)、『万物は流転する』(1989)をはじめ、M・ブルガーコフやA・ガーリチらの作品を掲載し、90年8月、「独立した文学・評論雑誌」であることを宣言した。『極北 コルイマ物語』で知られるV・シャラーモフВарлам Шаламов/Varlam Shalamov(1907―82)、V・ネクラーソフ、V・ボイノービチ、『酔いどれロシア』で知られるA・ジノビエフА.Зиновьев/A. Zinov'ev(1922―2006)らのかつての発禁作品を次々と発表した。ソ連邦崩壊後、二転三転する政治経済状況のなかで、よりいっそう文芸誌としての色彩を強め、雑誌名を冠した「オクチャーブリ賞」を設け優れた作品の発掘に努めるなど、現代ロシア文学を支える雑誌として大きな役割を果たし続けている。発行部数は、1927年1万部、86年17万5000部、89年38万部、ソ連崩壊後は低迷し、91年2万4200部、94年3万8200部、2000年夏では8570部と推移している。なお『オクチャーブリ』をはじめ現在ロシアで発行されている文芸誌の多くは、主要作品の載ったダイジェスト版をインターネット上で読むことができる。
[藻利佳彦]