日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌートリア」の意味・わかりやすい解説
ヌートリア
ぬーとりあ
coypu
nutria
[学] Myocastor coypus
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目カプロミス科の動物。南アメリカのチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、ブラジル南部に分布し、北アメリカ、東アジア、東アフリカ、ヨーロッパなどに帰化している。湖沼や流れの弱い河川などの岸辺にすみ、巧みに泳ぎ水草を主食にしている。日本では1939年(昭和14)に軍用の毛皮獣として150頭が初めて輸入され、1944年には4万頭も飼育されていた。第二次世界大戦が終わると需要がなくなり、放置されたものが野生化し、岡山県や京都府、兵庫県などで帰化している。カイリネズミ(海狸鼠)、ショウリ(沼狸)ともよばれる。頭胴長43~63センチメートル、尾長26~42センチメートル、体重6~10キログラム。外形はドブネズミに似て、大形で目や耳は小さい。前・後足とも5指であるが、後足の第1~第4指間には水かきがある。体色は、長くて粗い上毛は黄褐色か赤褐色、柔らかくて上質の下毛は羊毛状で暗灰色である。尾にはまばらに毛が生えていて、鱗(うろこ)が裸出している。水辺の土手に穴を掘って、群れですむ。妊娠期間は130日ぐらいで、1年に2~3回出産する。1産1~13子、平均5子を産む。子は、体重が約220グラムもあって目は開き、毛が生えている。乳頭は胸部の体側に4対あるが、母親は5日間しか哺乳しない。子は2~3日で餌(えさ)を食べ、泳ぐことができる。生後3~4か月で成熟し、6~7か月後に出産する。寿命は6~7年。毛皮は、カワウソに似て上質である。
[土屋公幸]