おひつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「おひつ」の意味・わかりやすい解説

おひつ

飯櫃(いいびつ)のこと。炊き上げた粥(かゆ)や飯を入れるための円形または楕円(だえん)形の食器で、飯次(めしつぎ)、飯鉢(めしばち)ともいう。『伊呂波(いろは)字類抄』にすでに飯櫃の名がみえており、古代より椀(わん)によそう前の容器として使用されていた。その多くは、木製、金属製で漆が塗られており、中世以降には白木の桶(おけ)風のものも出現した。近世になると、地方によりさまざまな名称でよばれるようになった。関西では一般におひつと称するが、そのなかでも白木製の桶をおひつ、めしびつ、塗り物は「おはち」といって区別している。しかし関東ではこの区別がなく、すべておはちといっている。農村では飯詰(めしづめ)と称している所もあるが、これもおひつである。

[森谷尅久]

 現在はプラスチック製のものや保温ジャーといったものも使われているが、これらは吸水性が悪いため、飯がべたつく欠点がある。これに対し従来の木製のものは、使い込むほど吸水性がよくなり、温かい飯を入れたときに余分な水蒸気を吸い取るので、飯がぱらりとしておいしくなる。また、断熱性があるため保温の役目もする。したがって樹脂少ない、吸水性に優れた杉などが用いられる。なお、白木製のおひつは乾燥しすぎるとばらばらになることがあるので、扱いには注意が必要である。

河野友美


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