改訂新版 世界大百科事典 「オレンジミート」の意味・わかりやすい解説
オレンジミート
orange meat
凍結カツオを原料とした缶詰に多発する黄褐変肉。カツオの漁獲量の約50%は水煮または油漬缶詰に製造されるが,従来の氷冷法で貯蔵したカツオでは見られなかった黄褐変現象が近年多発し,ときには発生率が30%にも達するようになった。開缶直後の肉色は黄褐色で空気に接触すると褐色に変化し,独特の焦げ臭を伴う。この変化は褐変反応の一種である糖・アミノ反応(メイラード反応Maillard reaction)で,糖としては解糖の中間生成物であるグルコース6リン酸G6Pとフラクトース6リン酸F6Pが,アミノ化合物としてはヒスチジン,アンセリン,クレアチンが主として関与する。これらのうちアミノ化合物はいずれもカツオ筋肉中に常に多量に存在するので,G6PとF6Pの蓄積がオレンジミート発現の直接の要因となる。氷冷カツオでは,筋肉中のグリコーゲンが解糖系酵素によって分解され,最終的に乳酸が生成し,G6PやF6Pが蓄積することはない。これに対し,凍結カツオでは,筋肉の収縮活性が残っているため解凍中に収縮がおこり,かえって補酵素類の消耗が激しく,酵素が作用せずG6PやF6Pが蓄積する。したがって変色の防止には,急速凍結を避け,冷却海水中で予冷後に凍結したり,緩慢凍結する処理が有効である。
執筆者:山口 勝巳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報