改訂新版 世界大百科事典 「オンシツコナジラミ」の意味・わかりやすい解説
オンシツコナジラミ
greenhouse whitefly
Trialeurodes vaporariorum
半翅目コナジラミ科の昆虫。ヨーロッパや南・北アメリカ各国をはじめ世界各地で,温室やハウス栽培の野菜や花卉に,大被害を与える重要害虫である。北アメリカ南西部の原産で,日本へは1970年代の初めころ侵入し,トマトの苗や観賞用植物の移動により,急速に北海道から沖縄まで広がった。きわめて多くの植物に寄生し,北アメリカでは200種以上,日本でも130種以上の寄主植物が記録されている。野菜ではトマト,ナス,キュウリ,カボチャ,インゲンなどに,花卉ではポインセチア,フクシア,ペラルゴニウム,ランタナなどに好んでつき大発生する。成虫の体長は1.1mm内外,全体が白い粉で覆われる。さなぎは淡黄色の卵形で,長さ約0.9mm,初めは平たいがだんだんに膨らんで,コロッケ状になる。体のまわりと背面に,長いガラス質のとげ状の分泌物が多く出ているが,葉裏の毛の多少によって変異が多い。20~25℃では卵期間6~8日,幼虫期間8日,さなぎ期間約6日なので,温室内では年10回以上発生し,つねに各態が混生するため,防除が困難である。キュウリの黄化病ウイルスを媒介する。群生するので吸汁の害も大きいが,スス病による被害のほうが大きい。天敵としては,ヨーロッパから導入された寄生バチのツヤコバチ科のEncarsia formosaほかがいる。近縁種に,同じく侵入害虫のイチゴコナジラミT.packardiがある。
執筆者:宮武 頼夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報