植物学的にはフウロソウ科テンジクアオイ属Pelargoniumの総称とされるが,かつてはフウロソウ属Geraniumとして扱われていたため,現在でも多くの園芸植物が旧学名のゼラニウムの名で呼ばれている。園芸上,ペラルゴニウムといわれるものは,この属の植物のうち,オオバナテンジクアオイP.grandiflorum Willd.やP.cucullatum Ait.,P.angulosum Ait.およびこれらを相互に交配し,改良した,P.×domesticum Bailleyなどの一群の栽培植物をさす。和名をナツザキテンジクアオイといい,英名はshow geranium,fancy geranium,またジョージ・ワシントン夫人にちなんでMartha Washington geranium,Lady Washington geraniumともいわれる。これら原種は南アフリカ原産で,ヨーロッパにおいて温室用草花として改良された。高さ50cm以上となり,よく分枝して茂り,小低木状となる。葉縁に細鋸歯のある心臓形葉をもち,葉脈にそってしわがある。花は径5cm前後の5弁花で,アザレアに感じが似る。1花房の花数は5~7輪。花色は紅,桃,白,紫紅,サケ肉色などがあり,絞り,覆輪,上下弁の色違いなど模様の変化が多い。花型も平弁のほか波状弁花のものもあり,品種が多い。花期は4~6月の一季咲性。別系に,パンジー・ゼラニウムと呼ばれる小輪多花性の系統もある。
繁殖は挿木による。一般に9~10月ごろに新枝の枝先を3~5葉つけて切りとり,これを挿穂として赤土,川砂,またはバーミキュライトなどに挿す。鉢用土は,赤土などに腐葉土を混ぜたものでよいが,石灰を加えて酸性を中和させておくとよい。栽培は原則として温室で行うが,灌水のほか,月1~2回追肥をして生育を促す。越冬温度は5℃以上必要で,ゼラニウムより耐寒性が低い。
執筆者:柳 宗民
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フウロソウ科(APG分類:フウロソウ科)ペラルゴニウム(和名テンジクアオイ)属の総称。温室性の多年草または亜低木。今日、園芸上でペラルゴニウムというのは、南アフリカ喜望峰(きぼうほう)原産のP. grandiflorum Willd.を中心に数種の原種を交配、改良したものである。代表種であるナツザキテンジクアオイP. domesticum Baileyは、茎はよく分枝して茂り、高さ50センチメートル以上になる。葉は広心臓形または心臓形で、縁(へり)に細かい鋸歯(きょし)がある。花径6センチメートル以上に及ぶ大輪系と約2.5センチメートルの小輪系があり、一花房に6~10個の花を開く。花色は黒赤、赤、緋赤(ひせき)、赤紫、紫、藤紫(ふじむらさき)、白色をもとにして覆輪や斑(ふ)入り、また上2弁と下3弁の色違いのものなど変化に富み、華やかである。開花期は日本では4月から梅雨期までであるが、雨に当たると花弁が傷むので、鉢植えやプランター植え、また品種によっては吊(つ)り鉢植えとし、ベランダなど直接雨に当たらないところで観賞するとよい。
繁殖は挿木により、9月以降の涼しい時期にできるだけ早く行い、開花までに苗を大きく育てるようにする。排水のよい粗粒の用土を用い、4、5号鉢で育てる。越冬温度は5℃。開花の終わった苗は、一回り大きな鉢に移植し、大きく育てる。
[山口美智子 2020年8月20日]
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「ゼラニウム」のページをご覧ください。
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…フウロソウ科の多年草(イラスト)。和名はテンジクアオイ。現在はテンジクアオイ属Pelargoniumとして分類されているが,園芸的には旧属名ゲラニウムGeraniumをそのまま使用している。一般にゼラニウムと呼ばれているものは,南アフリカ原産のモンテンジクアオイP.zonale L.を中心にP.inquinans Ait.などを交配して改良したもので,多くの系統,品種がある。草本質の半低木状となる耐寒性のない多年草で,浅い欠刻のある円状心臓形~腎臓形の葉をつけ,モンテンジクアオイの系統が強く出たものは,葉に褐色輪紋を現すことが多い。…
※「ペラルゴニウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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