日本大百科全書(ニッポニカ) 「かくれんぼう」の意味・わかりやすい解説
かくれんぼう
鬼遊(おにあそ)びの一種。じゃんけんなどで鬼を決め、その鬼が目をつぶっている間に皆が隠れる。鬼に最初にみつけられた者が次の鬼になることを基本の遊びとしている。隠れ鬼ともいうが、この遊びの歴史は相当に古かったようで、『栄花(えいが)物語』の莟(つぼ)み花の巻に、かくれ遊びとして名がみえている。「ともすれば御かくれあそびのほどもわらはげたる心地して」とあり、『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』によれば、その名称も数多かった。かくれご(出雲(いずも)=島根県)、かくれかんじょう(相模(さがみ)=神奈川県)、かくれかじか(仙台)などがみえる。かじか(河鹿)は岩の間に隠れるから、それにちなんでの名称であろう。明治以後この遊びが流行したので、全国的にさまざまな呼び方のあることが明らかになった。カクレモーモ(長崎県)、カクレモチ(新潟県長岡市付近)、カクレジョッコ(秋田県北部)、カクレモジョ(鹿児島県)、ナブリッコ(東京都八丈島)など、ほかにも方言は多い。東京周辺では「もういいかい」「もういいよ」という問答が通例となっているが、この間に唱えることばがある地方も多い。熊本県の球磨(くま)郡地方では、かくれんぼうをモウゾウガクレとよぶ。モウゾウは化け物のことらしいが、ここでは隠れ終わったときに「モウゾウ」とよぶそうである。そうよぶ以前に小さな声で「だぁまれ、だぁまれ、雉(きじ)の子、うんともいうな、屁(へ)もひんな、鉄砲かためが通ったぞ」という。鉄砲かためは鉄砲を肩にした者の意。奈良県では「モウヤァ」といって隠れるが、これが東京付近でいう「まだまだ」にあたるし、東京で「もういいよ」という合図のことばは、このへんでは「チンカラコ」といわれる。
[丸山久子]