じゃんけん

精選版 日本国語大辞典 「じゃんけん」の意味・読み・例文・類語

じゃん‐けん

  1. 〘 名詞 〙(けん)の一種。片手で、石、はさみ、紙の形を互いに出し合って勝負をきめること。また、その遊び。いしけん。じゃんけんぽん。
    1. [初出の実例]「近頃東都にてはやりしはジャン拳也」(出典:随筆・皇都午睡(1850)初)
    2. 「ジャン拳で負けて氷を買ひに行ったお延は」(出典:家(1910‐11)〈島崎藤村〉下)

じゃんけんの語誌

( 1 )「拳」は寛永年間に中国から長崎へ伝来し、長崎拳のちに本拳と呼ばれて、主に酒席での大人の遊戯として広まった。
( 2 )今日のじゃん拳の元となったのは、近世後期にはじまった三すくみ拳の一つ藤八拳とされており、これは狐拳庄屋拳とも呼ばれた。
( 3 )名称の由来は、手の指で石・紙・鋏(はさみ)の形を表わす三すくみ拳の一つ「しゃくけん(石拳)」の転訛とする説や、親指と人指し指で表わす鋏の形が本拳の二(りゃん)と同形であるところから「りゃん拳」の転訛とする説などがあるが、定かではない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「じゃんけん」の意味・わかりやすい解説

じゃんけん

拳(けん)の一種。石拳(いしけん)ともいい、勝負を決めたり、鬼ごとの鬼決めの方法などにも用いられる。元禄(げんろく)時代(1688~1704)初期に、中国から長崎へ伝えられたものが広まったといわれる。片手で行うのが普通で、拳(こぶし)を握ったものを石(グー)、手のひらを開いたものを紙(パー)、人差し指中指、または親指と人差し指とを開いたものを鋏(はさみ)(チョキ)とし、石は鋏に、紙は石に、鋏は紙に勝つ。東京付近では「じゃんけんぽん」と掛け声をして出し、もし同じものであるなら「あいこでしょ」といってやり直す。

 じゃんけんには「足じゃんけん」という、足の形でグー、チョキ、パーを表現して勝ち負けを決める遊びがある。足の形は、グーは両足をつけて閉じた形、チョキは片足だけで立つ、または足を前後に開く、パーは両足を左右に開く。「じゃんけんぽん」といいながら2回片足跳びして、3回めに足じゃんけんの勝ち負けの形をする。グー・パー・チョキという呼称から、グリコ・パイン・チョコレートと子供の好きなものでよぶときもあり、方法も名称もルールもつねに子供の世界で流動し続けている。

 なお、拳という、2人が相対して手や指の屈伸で掛け声をかけながら勝負を争う遊びが古くからあり、虫拳(蛙(かえる)・蛇・蛞蝓(なめくじ))、庄屋拳(しょうやけん)(庄屋・狐(きつね)・猟師)などがある。

[丸山久子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「じゃんけん」の意味・わかりやすい解説

じゃん拳 (じゃんけん)

拳の一種。〈石拳〉ともいう。中国から伝わった本拳から生まれたものと思われる。片手の5指を使った石(握ったもの),紙(5指を全部開いたもの),はさみ(人差指と中指または親指をのばしたもの)の三つで勝負を争う子どもの遊戯。石をグウ,紙をパラリあるいはパア,はさみをチョキまたはポキといって,石ははさみに勝ち,紙は石に勝ち,はさみは紙に勝つ。方法は1度で勝負を決するもの,3度つづけてする〈三じゃん〉などがある。

 イタリアにはモーラmorraといって同様の遊びがある。これも古く中国からペルシア(イラン)に渡り,ペルシアからまたイタリアに伝わったものといわれている。やり方は右手の親指,人差指と小指の3本を使って2人でやるのを通則とし,親と子にわかれて,親は3回,子は5回つづけて勝つことを条件としている。その方法は双方掛声と同時に,3本の指のうちいずれかの1本を出し,双方同じ指だったときは親の勝となり,ちがった指の場合には子の勝となる。勝ったときは〈イチー〉と掛声をして,ポンとこぶしをふってから,さらに随意の指を出す。つづけて勝てば〈ニー〉と叫ぶ。こうして親は3回,子は5回つづけて勝てば勝者となる。

執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本文化いろは事典 「じゃんけん」の解説

じゃんけん

グー(握り拳)、チョキ(ピースサイン)、パー(手を開いた状態)というそれぞれの手の形を石、ハサミ、紙などの物に見立て、どの形を出したかで勝敗を決める遊びです。偶然性を利用しており、誰でも簡単に参加できます。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のじゃんけんの言及

【鬼ごっこ】より

…古くから行われてきた子どもの遊び。〈おにごっこ〉〈おにあそび〉が一般的な名称であり,この系列の遊びに対する総称にもなっている。しかし時代,地方によりさまざまな呼称がある。《物類称呼》によれば〈江戸にて鬼わたしと云,京にてつかまへぼと云,大坂にてむかへぼと云,東国及出羽辺又肥の長崎にて鬼ごとと云,奥の仙台にて鬼々と云,津軽にておくりごと云,常陸にて鬼のさらと云〉とあり,各地方の種々の別称を挙げている。…

【拳】より

…両人相対し指,手,腕や体勢で形姿を示し,それによって勝敗を決める遊び。拳の種類によってそれぞれの取り決めがある。拳戯は中国からの渡来遊戯とするのが通説で,中国では拇戦,拇陣,中指之戯などと呼ばれ,酒宴の座興として行われた。日本では拳打あるいは○○拳と呼ばれ,江戸期に長崎から京坂,そして江戸へと伝えられた。現在では,拳といえば〈じゃんけん〉を想起するのが一般的だが,その他にもさまざまな拳がある。しかし,それらを遊事の内容から大別すると,数拳と三すくみ拳の2種類に分けることができる。…

※「じゃんけん」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android