問答(読み)モンドウ

デジタル大辞泉 「問答」の意味・読み・例文・類語

もん‐どう〔‐ダフ〕【問答】

[名](スル)
問うことと答えること。質問応答。また、議論すること。「人生について問答する」「問答をかわす」
仏語教義についての論議や宗派間の法論。また、禅宗で、修行者仏法についての疑問を問い、師家しけがこれに答えること。禅の代表的な修行法の一。「禅問答
[類語]質疑問い質問発問設問諮問問題疑問押し問答水掛け論禅問答一問一答自問自答質疑応答聞く問う尋ねるはかただ問い質す聞き質す問い合わせる聞き合わせる借問しゃもん試問下問問い返す聞き返す聞き直す尋ね合わせる照会打診

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精選版 日本国語大辞典 「問答」の意味・読み・例文・類語

もん‐どう‥ダフ【問答】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 問うことと答えること。問と答。また、言いあうこと。議論しあうこと。
    1. [初出の実例]「聊作戯歌以為問答也」(出典:万葉集(8C後)四・六六七・左注)
    2. 「御辺達はこれにて敵のもんだうをせよ」(出典:義経記(室町中か)五)
  3. 仏語。
    1. (イ) 法義の意味などを論じあうこと。特に、禅宗では、修行者が疑問を師家に問い、師家がこれに解答すること。問酬(もんしゅう)ともいう。
      1. [初出の実例]「住果の縁覚仏所へは至哉と被問答有けるを、上人聞給て」(出典:古事談(1212‐15頃)三)
    2. (ロ) 宗論や論議などのこと。大原問答安土宗論などの類。
  4. 指導を受けること。疑問点などを問いただして教示を受けること。
    1. [初出の実例]「稽古に力入る人も、才学を好み、義を案じもちてばかり問答をする時」(出典:為兼和歌抄(1285‐87頃))
  5. 中世の民事裁判で、訴人(原告)と論人(被告)が、裁判所を通じそれぞれ訴状と陳状(答弁書)を交換しあい、主張を行なうこと。三回まで行なうことができ、これを三問三答(三問答)という。また、この三問三答で決着のつかないときに、訴論人を引付の座(法廷)に呼び出して尋問すること(引付問答)をもいう。また広く訴訟一般をさしてもいう。問注。問陳。
    1. [初出の実例]「問答之後、訴論人共有所存者重遂問答、是を覆問と云」(出典:沙汰未練書(14C初))
  6. 江戸時代、大名・旗本などからの、幕府奉行所への裁判や民政についての問い合わせと、これに対する奉行所の答(挨拶)のこと。
  7. もんどうか(問答歌)」の略。
    1. [初出の実例]「右二首問答」(出典:万葉集(8C後)一〇・一八四二・左注)

問答の補助注記

中世には、四段に活用させた動詞「もんだふ」が見られる。→もんだう(問答)

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改訂新版 世界大百科事典 「問答」の意味・わかりやすい解説

問答 (もんどう)

討論的な応答をいう。日本の芸能の中には,早くから問答体による一種の劇が成立していたらしく,《玉葉》治承2年(1178)11月2日条には,春日祭に赴いた勅使一行に加わる舞人が,奈良坂において検非違使(けびいし)に扮し,風刺をともなう問責劇を演じたことが見える。延年(えんねん)や猿楽能にも,一曲の見せ場を導くために問答を設定する場合がある。延年の大風流(おおふりゆう)では,問答によって走物(はしりもの)などの風流衆を導き,舞楽で納め,連事(れんじ)では白拍子(しらびようし)などの歌謡を導く。能では一曲のうちに〈問答〉という謡事(うたいごと)小段をもつ曲があり,とくに現在能では現在進行形の緊迫した対話で,一曲を進める場合もある。たとえば,《自然居士(じねんこじ)》などがそれで,ワキの人買いとの問答により,シテの自然居士がさまざまな雑芸を披露してみせる。また夢幻能におけるワキとシテの問答には,信仰の場における託宣(たくせん)の形式が根底をなしているともいわれる。

 問答によって観客の笑いを誘う芸能は古くからあった。延年の答弁(とうべん)は,問者(もんじや)に対する当意即妙の答えを身上とし,万歳も本来は太夫と才蔵の掛合い問答で構成されるが,祝言性を強くしたため,問答の妙味は薄い。しかしなんといってもこの芸系の代表は狂言であろう。問答は宗教の場でも修行法の一つとして用いられた。仏教では〈論義〉と称し,問者と答者(たつしや)の間には一定の様式があり,その形式は能の謡にも影響を与えている。また修験(しゆげん)の徒の問答も芸能に多くとり入れられ,能の《安宅(あたか)》では,現在も金剛流の特殊演出として〈山伏問答〉(〈問答之習〉)がある。彼らが伝承した修験系の神楽(かぐら)の能には,問答が主体となる曲もある。一年の4節を5人の王子が配分することをテーマとした《五行神楽》がその代表で,現在でも中国地方の民俗芸能で行われる。なお,歌舞伎でも能の影響による曲に問答があるが,《安宅》を原拠とする《勧進帳》の〈山伏問答〉がとくに著名である。
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世界大百科事典(旧版)内の問答の言及

【論義】より

…議論すること。とくに仏教において問答によって経論の要義を究明する方式をいう。インドの仏典に論式の規定が見え,中国では東晋の支遁が《維摩(ゆいま)経》を講じた際に論義の方式に依って以来,諸寺の講会において広く行われた。…

※「問答」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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