中世には、四段に活用させた動詞「もんだふ」が見られる。→もんだう(問答)
討論的な応答をいう。日本の芸能の中には,早くから問答体による一種の劇が成立していたらしく,《玉葉》治承2年(1178)11月2日条には,春日祭に赴いた勅使の一行に加わる舞人が,奈良坂において検非違使(けびいし)に扮し,風刺をともなう問責劇を演じたことが見える。延年(えんねん)や猿楽能にも,一曲の見せ場を導くために問答を設定する場合がある。延年の大風流(おおふりゆう)では,問答によって走物(はしりもの)などの風流衆を導き,舞楽で納め,連事(れんじ)では白拍子(しらびようし)などの歌謡を導く。能では一曲のうちに〈問答〉という謡事(うたいごと)小段をもつ曲があり,とくに現在能では現在進行形の緊迫した対話で,一曲を進める場合もある。たとえば,《自然居士(じねんこじ)》などがそれで,ワキの人買いとの問答により,シテの自然居士がさまざまな雑芸を披露してみせる。また夢幻能におけるワキとシテの問答には,信仰の場における託宣(たくせん)の形式が根底をなしているともいわれる。
問答によって観客の笑いを誘う芸能は古くからあった。延年の答弁(とうべん)は,問者(もんじや)に対する当意即妙の答えを身上とし,万歳も本来は太夫と才蔵の掛合い問答で構成されるが,祝言性を強くしたため,問答の妙味は薄い。しかしなんといってもこの芸系の代表は狂言であろう。問答は宗教の場でも修行法の一つとして用いられた。仏教では〈論義〉と称し,問者と答者(たつしや)の間には一定の様式があり,その形式は能の謡にも影響を与えている。また修験(しゆげん)の徒の問答も芸能に多くとり入れられ,能の《安宅(あたか)》では,現在も金剛流の特殊演出として〈山伏問答〉(〈問答之習〉)がある。彼らが伝承した修験系の神楽(かぐら)の能には,問答が主体となる曲もある。一年の4節を5人の王子が配分することをテーマとした《五行神楽》がその代表で,現在でも中国地方の民俗芸能で行われる。なお,歌舞伎でも能の影響による曲に問答があるが,《安宅》を原拠とする《勧進帳》の〈山伏問答〉がとくに著名である。
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…議論すること。とくに仏教において問答によって経論の要義を究明する方式をいう。インドの仏典に論式の規定が見え,中国では東晋の支遁が《維摩(ゆいま)経》を講じた際に論義の方式に依って以来,諸寺の講会において広く行われた。…
※「問答」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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