カシケ(その他表記)cacique

翻訳|cacique

改訂新版 世界大百科事典 「カシケ」の意味・わかりやすい解説

カシケ
cacique

もともとは西インド諸島原住民ことば酋長を意味した。新大陸のスペイン人征服者や植民者が西インド諸島以外のインディオ社会の指導者にもこの語を当てるようになったので,スペイン植民時代に征服者とインディオ社会の仲介者として機能したインディオ社会の指導者を意味するようになった。征服者,エンコメンデロエンコミエンダ),コレヒドール宣教師はカシケを通じてインディオ社会を支配し,代りにカシケは税と強制労働を免除され,乗馬や武具洋服着用を認められ,土地の長子相続権が認可されたので,広大な土地所有者となるものもあった。しかし,植民勢力に不都合な者は容易に座を追われ,別のカシケに置き換えられた。こうして,18世紀になると,富裕で貴族化したカシケが出現する一方,没落する者も多かった。現在,ラテン・アメリカでは地方の政治上のボス,圧制者,暴君をカシケと呼ぶことが多く,彼らの牛耳る政治はカシキスモと呼ばれる。軽い意味では,〈横柄な人〉を意味する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカシケの言及

【ムクドリモドキ(椋鳥擬)】より

…くちばしはやや細長い円錐形で,じょうぶで先がとがっている。オロペンドラ(英名oropendola)やカシーク(英名cacique)のなかまは,くちばしの基部が額にまでのび,額板を形成する。羽色は,オナガムクドリモドキ(英名grackle)(イラスト)やコウウチョウ(英名cowbird)(イラスト)では黒色か褐色だが,多くのものは黒色と赤色,黄色,橙色,褐色,栗色などとを組み合わせた比較的はでな色をしている。…

【スペイン】より

…難局の舵を次に握ったのは,穏健派左派と進歩派右派が新たに結成した自由主義連合であり,指導者となったオドンネル将軍は,国内のナショナリズムを高揚すべく,モロッコ戦争(1860)をはじめ,フランスとの共同行動によるインドシナ遠征(1860),サント・ドミンゴの併合(1861‐67),メキシコ遠征(1862)などの軍事進出政策を敢行した。しかしながら国内政治に目を転じれば,厳しい制限選挙と寡頭支配者(カシケ)による選挙操作によって,自由主義体制は虚構のものでしかなかった。平和裡の政権交代が不可能なために,反対派は権力を掌握する手段として軍事蜂起に訴えざるをえない。…

※「カシケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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