改訂新版 世界大百科事典 「カシケ」の意味・わかりやすい解説
カシケ
cacique
もともとは西インド諸島の原住民のことばで酋長を意味した。新大陸のスペイン人征服者や植民者が西インド諸島以外のインディオ社会の指導者にもこの語を当てるようになったので,スペイン植民時代に征服者とインディオ社会の仲介者として機能したインディオ社会の指導者を意味するようになった。征服者,エンコメンデロ(エンコミエンダ),コレヒドール,宣教師はカシケを通じてインディオ社会を支配し,代りにカシケは税と強制労働を免除され,乗馬や武具・洋服の着用を認められ,土地の長子相続権が認可されたので,広大な土地所有者となるものもあった。しかし,植民勢力に不都合な者は容易に座を追われ,別のカシケに置き換えられた。こうして,18世紀になると,富裕で貴族化したカシケが出現する一方,没落する者も多かった。現在,ラテン・アメリカでは地方の政治上のボス,圧制者,暴君をカシケと呼ぶことが多く,彼らの牛耳る政治はカシキスモと呼ばれる。軽い意味では,〈横柄な人〉を意味する。
執筆者:黒田 悦子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報