エンコミエンダ(読み)えんこみえんだ(英語表記)Encomienda

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンコミエンダ」の意味・わかりやすい解説

エンコミエンダ
えんこみえんだ
Encomienda

ラテンアメリカのスペイン領植民地において、先住民のキリスト教化を名目に、スペイン国王が植民者に先住民の統治を委任した制度。統治者(エンコメンデロ)は先住民に貢納賦役労働を課す権利を与えられた。その起源は、コロンブスイスパニョーラ島で実施した先住民労働力の分配であるといわれる。1503年イサベル女王(1世)がイスパニョーラ総督オバンドに対して先住民の使役(ただし賃労働)を許可したことにより制度化された。この制度はメキシコ、ペルーなど先住民人口の稠密(ちゅうみつ)な地域で発達したが、鉱山などで事実上の奴隷労働化を招いた。スペイン人植民者の専横ぶりに驚いたスペイン王室はしばしばこの制度の廃止を試みたが、反対運動のため成功しなかった。しかし9割以上ともいわれる先住民人口の激減によって、エンコミエンダは16世紀末以後衰退し始め、18世紀にはラテンアメリカ全域でほぼ消滅した。

[原田金一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エンコミエンダ」の意味・わかりやすい解説

エンコミエンダ
encomienda

16世紀に始められたスペイン植民地における土地支配と先住民委託制度。征服当初,レパルティミエント弊害が目立つとそれに代って,地域の防衛,先住民 (インディオ) の保護と教化を条件に,スペイン国王が征服者 (植民者) にインディオの統治を委託 (エンコメンダール encomendar) し,受権者 (エンコメンデーロ encomendero) は代償として一定の土地と,インディオに賦役,貢納を課す特権を付与された。法的には土地所有権,裁判権は含まれず,インディオは自由人とされて,売買,譲渡は禁止されており,古典荘園の農奴に近い状態にあった。しかしインディオの酷使と激減が目立つと,国王はやがてその廃止を試み,1542年「新法」でその制限,相続禁止などを定めたが,ペルーの大反乱をはじめ,エンコメンデーロの猛反対を受けて失敗した。しかし 16世紀末以後,インディオ人口の減少,国王の課税,アシエンダ (私有制大農園) の発展に伴い経済的重要性は次第に縮小され,1718年のエンコミエンダの相続廃止令後 18世紀末までに廃止された。

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