改訂新版 世界大百科事典 「カストナー」の意味・わかりやすい解説
カストナー
Hamilton Young Castner
生没年:1858-99
アメリカの化学技術者。ニューヨーク州ブルックリン生れ。1879年にコロンビア大学鉱山学部を中退して,ニューヨーク市で化学分析コンサルタント業を開業,86年イギリスに渡った。同地で88年に開始した彼の新法による金属ナトリウムを用いるアルミニウムの生産は,溶融塩電解法の出現で敗退した。しかし彼は,水酸化ナトリウムの溶融・電解による金属ナトリウムの採取法(1890特許)や,揺動水銀槽を用いて食塩水を電解する水酸化ナトリウムの製造法(1896工業化)を開発し,金属ナトリウムを原料とする過酸化ナトリウムの製造法,シアン化ナトリウムの製造法(1898)も確立して,金属ナトリウム製造の工業化に成功した。1890年ころから肺結核を病み,冬季はフロリダで静養したが,99年ニューヨーク州で死去した。
執筆者:原 善四郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報