日本大百科全書(ニッポニカ) 「かすみ網」の意味・わかりやすい解説
かすみ網
かすみあみ
野生鳥類を捕獲するための張り網の一種で、下端が地上に接するか、地上からやや高い空間に張れるように製作された網。糸が細く、張ると薄く霞(かすみ)がかかったように見えるため、かすみ網という。また、日中空間に張るので天網(てんあみ)、昼天(ひるてん)ともいった。古来、主として秋季渡来する中形以下の鳥獣(ツグミ類、タシギ、ウズラなど)の大量捕獲のため、広く世界各地で用いられてきた。日本では江戸時代から北陸、中部、東北地方で、かすみ網猟または鳥屋(とや)猟という組織的な猟法として発達した。網は普通10番以下の太さの黒染めの絹、木綿、麻、ナイロンなどの糸で編まれ、長さ2~12メートル、幅1.5~2メートルで、細い竹材を支柱にして開張する。
かすみ網猟は、有益鳥類の無差別大量捕獲のおそれがあるため、1947年(昭和22)以来、有害鳥駆除、学術研究のための捕獲など、特別の理由ある場合を除き、狩猟行為としての使用は禁止されている。
[白井邦彦]