日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブトゴケ」の意味・わかりやすい解説
カブトゴケ
かぶとごけ
地衣類ヨロイゴケ科のカブトゴケ属の総称。日本には約20種が知られている。地衣体は平らな葉状体で、不規則に二又状に分かれ、内部の共生藻には緑藻の場合と藍藻(らんそう)の場合とがある。子器は柄がなく、地衣体の先につき、杯(さかずき)状で、表面は褐色になる。地衣体には粉芽も裂芽もないことが多い。山地の樹幹や根元によく生え、ときに林の中の腐植土上にコケ類とともに生育する。
代表的な種としてナメラカブトゴケLobaria orientalis (Asah.) Yoshim.があり、ブナやウラジロモミなどの樹幹に着生する。地衣体は径20センチメートルくらいになり、集合して大きな広がりをもつこともまれではない。形は緩く二又状に分かれ、表面が湿っていると鮮緑色、乾くと黄褐色となり、盛り上がったり、くぼんだりして、やや網目状の模様をもつ。裏側は淡褐色で、溝目状となる。共生藻は緑藻である。エビラゴケL. discolor (Bory) Hueも、各種の樹皮に生える葉状の地衣体で、径10センチメートル前後となる。地衣体の表面は滑らかでつやがあるが、網目模様はない。裏側は淡褐色で、網目状模様はもたない。
[佐藤正己]