日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルパティア山脈」の意味・わかりやすい解説
カルパティア山脈
かるぱてぃあさんみゃく
Carpathian Mountains
中部ヨーロッパから東ヨーロッパにかけて横たわる山系をいう。その山系のなかのとくにウクライナ北西部からルーマニア南西部にかけてをさす場合もある。ロシア語名カルパート山脈Karpatï。カルパティアは英語名。チェコとスロバキアの国境付近からスロバキアとポーランドとの国境、ウクライナ西部を経てルーマニア東部から南西部に至る。東に向けて湾曲した弧を描き、その弧の内側にハンガリー盆地を抱く。南側をドナウ川が流れ、ドナウ川の本支流の水を涵養(かんよう)している。アルプスの東方に連続する褶曲(しゅうきょく)山脈で、第三紀造山運動によって完成した。総延長約1300キロメートルに及び、面積約13万平方キロメートルを占める。その規模はアルプスに匹敵するが、高さははるかに低い。山地は連続性に乏しく多数の山塊に分かれ、丘陵性または中山性で、隆起準平原や平頂峰の地形を示す部分が多く、低い峠と多数の小盆地に富む。カール(圏谷)や氷食湖をもつ高峰もあるが、これらは多く準平原上の残丘で、カルパティア山脈における最高峰は高タトラ山脈中のゲルラホウスキー山で2663メートルである。
ルーマニアにはいるとカルパティア山脈はその位置から、西、東ならびに南カルパティア山脈に分けられる。南カルパティア山脈はその地質構造が他と異なるので、トランシルバニア・アルプスとして別に取り扱われている。トランシルバニア・アルプスの最高峰はファガラス山地のモルドベアヌ山2544メートルである。
カルパティア山脈は、地形、地質から分けると、外帯をなす白亜紀から古第三紀にかけての地層からなるフリッシュ帯と、内帯をなす花崗(かこう)岩と結晶片岩からなる地帯とに分かれ、さらにその内側に火山帯があり、模式的な褶曲構造を示している。フリッシュ帯は東部アルプスの続きであって、ウィーン盆地を越してから小カルパティア山脈、白カルパティア山脈、西ベスキド山脈、東ベスキド山脈となってもっとも外側の山列をなし、連続的に連なり、南に急斜し、北側に緩斜している。内帯山地は南北2列の山脈からなっている。たとえばバーフ川やフロン川によって高タトラ山脈、低タトラ山脈とに分かれている。
カルパティア山脈はアルプスより北にあり、かつ内陸にあるため、気候はより寒く、より大陸的である。
[三井嘉都夫]