日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トランシルバニア・アルプス
とらんしるばにああるぷす
Transylvanian Alps
ルーマニア中央部を東西に連なる山脈。南カルパティア山脈ともいう。ルーマニアの地形的骨格をなすのは、カルパティア山脈とトランシルバニア・アルプスである。スロバキア、ポーランド、ウクライナにまたがり、ルーマニアの中央部を北西―南東方向に走るカルパティア山脈はその南部で西に向かって大きく湾曲し、東西方向に走る。これがトランシルバニア・アルプスである。カルパティア山脈のなかでもその構造は複雑で、侵食、隆起を繰り返してきた。このため準平原、河岸段丘がよく発達している。最高峰はファガラスFǎgǎras山地のモルドベアヌ山(2544メートル)。また更新世(洪積世)には氷河に覆われていたので、氷河地形も残っている。山脈中にはヤロミツァ川やオルト川などの刻む横谷(山脈を直角に横切る谷)が発達し、ルーマニアと中央ヨーロッパを結ぶ交通路として利用されてきた。
[三井嘉都夫]