改訂新版 世界大百科事典 の解説
カーペンター=キラム協定 (カーペンターキラムきょうてい)
1915年3月22日にスールー王国の第27代スルタン,ハマルル・キラム2世Jamal-ul Kiram IIとアメリカのフィリピン群島政府ミンダナオ・スールー管区長カーペンターFrank W.Carpenterとの間で結ばれた覚書協定。キラム2世はこの協定でいっさいの世俗の権力を放棄し,宗教的権威のみを保持することになった。その結果,15世紀中ごろから5世紀近く続いたスールーのスルタン制度,すなわちスールー王国は解体した。アメリカはフィリピン・アメリカ戦争の期間には,フィリピン南部のスルタンたちと一種の不介入協定を結んで平和的関係を維持したが,ルソン島,ビサヤ諸島の平定が一段落すると,不介入協定を一方的に破棄して,この地域に徹底した武力弾圧を開始した。アメリカの侵略に最も激しく抵抗したのがスールーであった。カーペンター=キラム協定はフィリピン・イスラム社会における反植民地闘争の終息と,伝統的社会秩序解体の起点を象徴するものである。
執筆者:池端 雪浦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報