日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ガッサーン・カナファーニー
がっさーんかなふぁーにー
assān Kanafānī
(1936―1972)
パレスチナの作家。アッカーに生まれる。1948年、イスラエル建国という事態に至ると、彼の家族もかろうじてシリアの山村ザバダーニーに逃れ、以後難民として苦難のなかで自己形成を遂げていく。ダマスカス大学を中退。アラブ民族運動の機関紙『アル・フッリイヤ』から誘いを受け、ジャーナリストとしての活躍を始める。69年『アル・ハダフ』紙の主幹となり、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)の政治スポークスマンとなるが、その結果シオニストの標的とされ、72年、自動車に仕掛けられたダイナマイトで爆死した。
彼は祖国を奪われた同胞の悲劇をつぶさに書きつづったが、それはかならずや同胞が離散することをやめて不退転の反攻に移り、奪われた祖国への帰還を果たすであろうという作家としての予見に支えられていたからであり、彼の遺稿集はパレスチナの民衆の遺産となっている。代表作には『太陽の男たち』(1963)、『ハイファに戻って』(1969)がある。
[奴田原睦明]
『黒田寿郎訳『太陽の男たち』、奴田原睦明訳『ハイファに戻って』(『現代アラブ小説全集7』所収・1978・河出書房新社)』