改訂新版 世界大百科事典 「キンバング」の意味・わかりやすい解説
キンバング
Simon Kimbangu
生没年:1889-1951
旧ベルギー領コンゴ(現,コンゴ民主共和国)のメシア的宗教運動指導者。バプティスト教会で教育を受けたのち,レオポルドビル(現,キンシャサ)で大工をしていたが,1921年春,神の啓示により故郷ヌカンバへ帰り,コンゴ族の土着信仰とキリスト教を融合させたキンバンギ宗を起こし,予言者および〈黒人の救世主〉として多数の信者を集めた。キンバンギ宗の信者たちの間には,やがて,21年10月21日には天から降る火によって白人が打ち滅ぼされるという予言が流布され,また納税拒否や強制栽培反対の運動が高まった。その反白人的傾向に警戒心を強めた植民地政府は,キンバンギ宗の弾圧にのりだし,21年9月,キンバングを逮捕,死刑を宣告した(のち終身刑に減刑)。しかしキンバンギ宗の抵抗運動はその後も続き,ムパディの指導するネオ・キンバンギ宗に引き継がれ,キンバング自身はエリザベトビル(現,ルブンバシ)で獄死したが,殉教者的ナショナリストとしてその名をとどめた。
執筆者:小田 英郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報