日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギトリ」の意味・わかりやすい解説
ギトリ(父子)
ぎとり
(1)ルシアンLucien Guitry(1860―1925) フランスの俳優。パリに生まれ、国立演劇学校に学び、1878年にジムナーズ座の『椿姫(つばきひめ)』で初舞台を踏む。のちにロシアのペテルブルグの劇場に招かれ、9年間出演。帰仏後、好んで同時代の写実的な大衆劇に出演し、内省的な性格俳優として、高く評価された。
(2)サッシャSacha Guitry(1885―1957) ルシアンの子で、劇作家、俳優。ペテルブルグで生まれ、満足に小学校教育を受けていないが、名優の子として早くから劇場に親しみ、よき時代のパリの伊達(だて)な気風を身につけた。そして1902年から49年の間に130編を超える戯曲を書いた。軽妙な筆致で、皮肉な恋愛心理を描く『夢を見よう』(1912)、『お聞きになるな、奥様』(1942)、伝記劇『パスツール』(1919)、『モーツァルト』(1925)など、大衆に愛され、ブールバール劇の王者として君臨した。31年に自作の『パスツール』を映画化(脚本・監督)して以来、本格的に映画に取り組むようになり、監督、脚本家、俳優として活躍。日本には『とらんぷ譚(ものがたり)』(1935)、『ナポレオン』(1954)が紹介された。
[加藤新吉]