改訂新版 世界大百科事典 「ギュイヨン夫人」の意味・わかりやすい解説
ギュイヨン夫人 (ギュイヨンふじん)
Madame Jeanne-Marie Bouvier de la Motte-Guyon
生没年:1648-1717
フランスのカトリック系の神秘家。病弱で精神的に不幸な少女時代を過ごすうち,真剣に神を求め敬虔な信心生活にあこがれるようになる。彼女は(1)祈りを通じ魂を浄化すること,(2)神の前では無に等しい自己のありのままの姿を見つめ,自己愛を完全に捨て去り,神の内なる真に自由な新しい生命を得ることがたいせつなこと,(3)そのためにはすべてを神にゆだねなければならないことを説いた。一時期ルイ14世の宮廷で熱烈な信奉者を得るが,彼女の説く信仰の純粋さがあまりにラディカルだったので,まもなくカトリック教会から迫害を受け,パリを追われる。アルノルトや,彼女の全集を編んだポアレP.Poiretなど,敬虔主義系プロテスタントに多くの影響を与えた。彼女はフェヌロンとボシュエのキエティスム(静寂主義)論争の発端となったためとくに有名である。当時広く読まれた《祈禱を容易に行う方法》(1685)その他,著書は多数ある。
執筆者:村田 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報