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静寂主義 せいじゃくしゅぎquietism

翻訳|quietism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

静寂主義
せいじゃくしゅぎ
quietism

キエティズムともいう。一般には,受動的な精神態度をいい,活動にかられる心を押えることによって,宗教的完徳が得られるという説。キリスト教では,17世紀のスペインのカトリック神秘主義的神学者 M.モリノスによって唱えられた説をいう。彼は完徳にいたるためには,神への瞑想による完全な受動性において心の平安が得られると考えた。この説はミサや教会への無関心を招くものとして 1687年異端とされたが,影響はオランダやフランスの神秘主義に,さらにはドイツのプロテスタンティズムの一派,敬虔主義にも及んだ。この要素は,仏教やマニ教,グノーシス派にもみられる。

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デジタル大辞泉の解説

せいじゃく‐しゅぎ【静寂主義】

自己の意志や行為を否定し、神にすべてをゆだねて心の安静を得ようとする精神的態度。狭義には、17世紀、外面化した教会に対し、信仰の内面化を求めて生じたカトリック教会内の神秘主義的傾向をいう。スペインのモリノスによって唱えられ、ドイツ敬虔主義に影響を与えた。キエティスムクィエティスム

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世界大百科事典 第2版の解説

せいじゃくしゅぎ【静寂主義】

〈キエティスム〉〈ヘシュカスモス〉の訳語。それぞれの項目を参照されたい。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

静寂主義
せいじゃくしゅぎ
quitismeフランス語

信仰生活において、自発的な活動を否定し、ひたすら高次の力(神)のなすままにゆだねる受動性を強調する立場。内面的信仰を重視する神秘主義的な宗教には、しばしばその傾向がみられるが、キリスト教史のうえでもその例が少なくない。ただそれが教会による統制を逸脱するおそれが生じると、異端視されがちであった。5世紀ごろシリアで発生した隠者集団メッサリアンは、不断の祈りのみを唯一の目標とし、生活実践面での不道徳をも許容するとして異端とされた。また12~13世紀に西・南ドイツで成立した「自由精神の兄弟(姉妹)」の運動にも、静寂主義の要素があるといわれる。それはおもに俗人の宗教運動としての当時のベガルド、ベグィーネたちにも影響し、その流れは宗教改革期の再洗礼派にまで継承されていった。
 以上は一般的な例であるが、より狭義では、17世紀のカトリック諸国にみられる同種の傾向をさす。総じて当時は、対抗宗教改革の結果、カトリックの宗教生活に統制や規律が重視された。ロヨラの『霊操(れいそう)』Exercitia spiritualiaはその意味で典型的である。これに対しスペインのモリノスは『霊の導き』Guida spirituale(1675)を書き、黙想によって神やキリストと一体となり、聖なる生活を生きる者には教会の救済手段も不要となると説いた。この書はイエズス会から攻撃され、2年後に異端とされた。同じ静寂主義の立場は、フランスのギュイヨン夫人(1648―1717)やその友のフェヌロン(1651―1715)にも著しい。とくに前者は多くの教化文書を著し、「無関心の愛」「裸の信仰」「神のなすがままにゆだねる」など、静寂主義の基本思想に古典的な表現を与えることで大きな影響を残した。そしてこれらカトリック諸国での静寂主義は、一部は文学をも媒介にして、宗派の枠を超え、プロテスタント敬虔(けいけん)主義へも継承された。[田丸徳善]

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世界大百科事典内の静寂主義の言及

【キエティスム】より

…過度の外的修行や従順の重視に対する反動として,人間の努力を過小評価し,完徳を神と人との完全協働に置かずに,ただ神の働きに心を徹底的に委託することのみを説くキリスト教の神秘思想。静寂主義と訳される。思想としては,5世紀のメッサリアニ派や13~14世紀のベガルド会とベギン会にも見られたが,この語が本来的に用いられたのは,16世紀後半にスペインのアルンブラドス派が労働,断食等の修行を軽視する信心を広めてからである。…

【ヘシュカスモス】より

…ビザンティン帝国の末期にアトス山を中心におこった神秘主義思想。〈静寂主義〉の意。インドのヨーガに似た肉体統制とイエスの祈りの無限の反復によって,心の平静(ヘシュキア)の状態を作りだし,神の〈非創造の光〉(キリスト変容の際,弟子が見たという光)を肉眼で見て,神と合一することを目標とする。…

※「静寂主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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