アルノルト(英語表記)Arnold, Gottfried

改訂新版 世界大百科事典 「アルノルト」の意味・わかりやすい解説

アルノルト
Gottfried Arnold
生没年:1666-1714

ドイツの神秘家,教会史家,詩人。ウィッテンベルク大学に学び,硬直化したルター派神学に失望,ドレスデンで知りあったシュペーナー感化をうけて敬虔主義の信仰をもつが,さらに当時の急進的スピリチュアリストに触発されて現世否定,教会否定の過激な思想家となる。ギーセン大学の歴史学教授を1年足らずで辞職,学問を否定し,収集した膨大な古今蔵書を焼き払った。後半生はペルレベルクの牧師となり教会に復帰した。毀誉褒貶(きよほうへん)の多い人物であるが,一貫して超越的存在の実体験を信仰の核心におき,キリストの教えの実践を主張しみずから実行した。キリスト教史を腐敗堕落の歴史とみなし,従来異端とされた神秘家によってこそ神の真の教えは細々と力強く継承されてきたと考え,神の知恵ソフィアと聖霊による終末と救済を確信した。ディオニュシウス・アレオパギタベーメギュイヨン夫人,アルントJohann Arndtの影響が濃い。《宗派によらぬ教会史異端史》(1699-1700),《神の知恵ソフィアの秘密》(1700)など文献学的にもすぐれた多数の著書を残すとともに,詩人としても傑出している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルノルト」の意味・わかりやすい解説

アルノルト
Arnold, Gottfried

[生]1666
[没]1714
ドイツの神学者。シュペーナーの影響を受け,1689年頃神秘主義的傾向をもった敬虔主義者の集会に入る。教会の歴史を,起源からの堕落の歴史であるとみなし,教会の模範として原始キリスト教を研究。ギーセン大学教会史教授に迎えられたが,すぐにやめ,牧師となり,著述に専念する。主著『分派教会と異端者の歴史』 Unparteiische Kirchen-und Ketzerhistorie (4巻,1699) において,神秘的傾向の分派教会をつくった「異端者」を真のキリスト教徒とみなし,論争を起したが,異端者自身の著書に基づいて叙述するというその試みは,教会史研究に貢献するところが多かった。

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世界大百科事典(旧版)内のアルノルトの言及

【自然誌】より

…イスラム圏では,10世紀末に〈純潔兄弟団(イフワーン・アッサファー)〉と呼ばれる秘密結社の知識人集団が自然誌《純潔兄弟の学(ラサーイル・イフワーン・アッサファー)》を著したが,さらに膨大で影響力の大きかったのは11世紀のイブン・シーナーで,彼の自然誌は《治癒の書》と題された18巻の大著である。12世紀以後ヨーロッパでも自然誌への関心が高まり,プリニウスの抜粋本が多くつくられたほか,13世紀に入ってバーソロミューBartholomewの《事物の特性について》,ザクセンのアルノルトArnold von Sachsenの《自然の限界について》,カンタンプレのトマThomas de Cantimpréの《自然について》,バンサン・ド・ボーベの《自然の鏡》,アルベルトゥス・マグヌスの《被造物大全》など多くの自然誌を生んだ。この傾向はルネサンス時代にさらに進み,いわゆる〈地理上の発見〉によって珍しい動植物がヨーロッパにもたらされたうえ,印刷技術が進んだので各種の図譜が刊行され,ついに16世紀にゲスナーやアルドロバンディによって正確で網羅的な自然誌が出された。…

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